第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
25.July・Afternoon:『Philadelphia experiment』
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不貞腐れたように訥々とリノリウムの廊下を歩く嚆矢、その後を歩く美琴、飾利、黒子。尚、彼女らがあの病室を訪れていたのは『涙子の診察が始まって、手伝いに来た受け付けの女性看護師に追い出された』からとの事。
脚の長さの違いから、大股で速歩きする嚆矢を追う三人は、ほとんど競歩に近い。
「対馬さん、そろそろ機嫌直してくださいよ〜」
「別に……キレてないっすよ」
「それ完全に怒ってますよぅ、嚆矢先輩」
「しかも、かなり古いネタでですの……」
普段ならその事を気遣うだろうが、今は余裕がない。真面目な事をしている自分を見られるのは、軟派気取りの彼としては本気で恥ずかしいのである。
「失礼します」
「どうぞ」
そうして訪れた、涙子の病室をノックする。診察が終わったばかりの、彼女の病室で。
「あ、初春ぅ〜! だけじゃなくて、白井さんに御坂さん、対馬さんも!」
佐天涙子の声が響く。何故か、酷く場違いに響く声が。それに、四人で答えながら。
『彼女』は、何の変わりもなく微笑んでいた。長い黒髪の、白い花飾りの佐天涙子は。
「やあ、君達。お友達の経過は良好だ、明日には退院できるよ」
「本当ですか?!」
「良かったですわね、初春?」
診療していた西之医師の言葉に、まず歓喜をもって応えたのは飾里。その後に、黒子が続いて。
「しかし、楽観はできません。あんな違法プログラムが、一体、人体にどんな悪影響を示すか……」
「確かに、まぁそうだが……基在君」
対し、複雑に思い悩む表情を浮かべた彼女──受け付けに居た、看護師。なるほど、確かに。彼女の心配する通りだろう、あらゆる病に楽観など許されない。
だが、だからと言って入院患者の前で、そんな不安になる事を言うなどと。
それに反感を感じたらしい少女三人が一斉に。『看護師長・基在』の名札を付けた、赤茶の髪に病人のように蒼白な黒縁眼鏡の女性────『基在 滅存』を見た。
当の看護師長は、全くもって歯牙にも掛けていないようだが。
「先生、次の患者の診療の時間です。行きますよ、ジェンキンス」
その看護師長の呼び声に、涙子の蒲団がモゾモゾと蠢く。そして、勢いよく────中から、茶色く長い『何か』が跳び出して看護師長の元へ。
彼女の体を、螺旋を描くように登ったそれは。
「あ────あれって!」
「わ、わ! もしかして、フェレットですか?」
「いいえ、ジェンキンスはオオリスです」
「まぁ、初めて見ましたわ……アニマルセラピー、というやつですの?」
まるで襟巻きのように、ほとんど黒に近い焦茶色のオオリスが看護師長に纏わりつく。『ジ
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