第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
25.July・Afternoon:『Philadelphia experiment』
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析しようと試みている。
そして、嚆矢はと言うと────誰にも聞こえない、バスの機関音に紛れるほどに小さな声で『解呪』のルーンを自らに刻んで。
「……『幻燈綺譚』、だよ。あらゆる文字、戯画を擬似的に、生命体のように動かす能力さ」
「『幻燈綺譚』……ですの?」
「聞いた事もないですよ、そんな能力……」
面倒臭そうに、嚆矢は蝶を捕まえながら口を開いた。聞き慣れない能力名に、黒子と美琴が口を揃えて。
「ああ────ウチの愚妹の稀少能力さ」
苦笑いしながら、蝶の折り紙を解く。一瞬、飾利が残念そうな顔をしたが、これはそういうもの。
よく、女子学生がやるもの。そう、凝った折り方の『秘密の手紙』だ。
「…………っ」
『解呪』により、嚆矢以外の他人に読まれぬよう、開く際に仕掛けられていた『発火』のルーンを無効とする。因みに、このルーンは『魔術』ではなく『能力』として効果を発揮するルーンなので、刻んだ者が害を受ける事はない。
中身を読む。そこには、実に簡潔に。万年筆を使ったらしい、達筆な草書体で。
『分かってるわよね、コウ兄?』
溜め息一つ。そして、四角く折り直して学ランの胸ポケットに仕舞う。
「妹さん、何て?」
「誕生日プレゼントの催促。一々煩いんだ。ウチは、高校まで携帯与えない主義だから何時もこれ」
「へぇ、でも、羨ましいかも。私、一人っ子だから」
微かに羨ましげに、美琴がそんな事を口にした。それは、恐らくは何の気なしに。
後の事を思えば、皮肉な言葉ではあるが。この時は、少なくとも。
「あ……私、此処です」
そこで、飾利の降りるバス停に。当然────
「じゃ、行こうか、飾利ちゃん」
「はい────って、先輩はひとつ先じゃ……」
「気にしなーい、気にしなーい。じゃあな、御坂、黒子ちゃん」
当然、変態紳士として嚆矢は彼女を送る事にした。美琴と黒子は二人だし、どちらも強力無比な能力者だ。よっぽどでもなければ、敵う者は居まい。
バス内から手を振る二人。それを見送って。
「さて、後十分で雨だ。急ごうぜ、飾利ちゃん」
「あっ……もう……強引すぎますよ、嚆矢先輩……」
有無を言わさぬまま、エスコートする。急げば、後十分でもギリギリ間に合うと、前回の“ドール讃歌”の時の経験で分かっている。そして、やはりそうなった。送り届けると同時に、風に乗り空を覆った雨雲はぽつぽつと、雫を落とし始めて。
余計な出費になるが、傘を買えば
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