第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
25.July・Afternoon:『Philadelphia experiment』
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に、ピンポイントに絞って。完璧に、完全に指令を遂行する。
『兄貴。ボクは伯父貴に合流する、兄貴も予定通りに』
「ああ……では、俺も予定通りに。時計合わせ、三、二、一────今」
この先、無線封鎖。全ては『懐中時計』の示す、予定通りに。その『風』に乗り、鼓膜を揺らした囁き。風力発電塔の頂きから数百メートル彼方の橋桁に声を届けた、風を操る彼女ならば、その彼が呟くだけでも聞き取ろう。
風力発電塔の頂きの少女が、強風と共に消える。バサバサと、羽撃くような。或いは、紙片が風に拐われるような音を残して。
代わり、川面に歩み出た男。魔導書により水流を操り、川に沈めていた『防水加工』の大きなジェラルミンケースを引き揚げた。大型の金管楽器を入れるような、大きなモノを……担ぎ上げて、彼方の電波塔を。
「伯父貴、貴方は鼻白むだけだろうが…………“深淵の大帝”の加護が有らんことを」
僅かに、緑色の光に包まれた其所を見詰めて────
………………
…………
……
吹き抜けた風に、嚆矢は空を見上げる。黒い入道雲が、空の三分の一を覆っていた。どうやら、天気が崩れてきたらしい。
『樹形図の設計者』の予報通りに、もう間も無く夕立が来るらしい。再度吹き抜けた強い風、その孕む湿気の質が変わっている事を肌で感じた。
「嚆矢先輩……今、見ました?」
「ウウン、ミテナイヨ」
強い風はひらりと、土埃と共にあらゆるものを舞い上げる。例えば、目の前の花飾りの少女の、今は裾を押さえたスカートとか。フリル付きの檸檬色とか。
「…………(じー)」
「ホントダヨ、ズットソラヲミテタヨ」
疑わしげな瞳を向けてくる飾利、だが、変態紳士として女性に恥はかかせられない。シラを切り、ぴーひょろと下手くそな口笛を吹いたり。
買い物を終え、帰途についた四人である。目下、今の懸念はただ一つ。
「ああもう、いつまでやってますの! あのバスに乗り遅れたら、雨に降られながら帰る事になりますのよ!」
「うわっ、ヤバッ! バス、もうバス停に入ったわよ!」
前を走る黒子と美琴の言う通り、既に二十メートル先のバス停にバスが停車した。後は、モノの数秒で出発するだろう。チラリと懐中時計を見れば、『輝く捩れ双角錐』の妖しい輝きと共に、針は十五時四十五分を示していた。
どう考えても、走るだけでは間に合わない。飾利の手を引いて前を走る二人に追い付いたときには、
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