第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
25.July・Afternoon:『Philadelphia experiment』
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『やっぱり』ですの、それくらいで済んだ事が奇跡ですのよ、佐天さん」
ガクリと肩を落とした彼女、しかし、それで済めば安いもの。黒子が眉根を寄せながら言った通り、もしももっと大事に……例えば死人が出たり、原発に『幻想猛獣』が突っ込む事態になっていれば、幾ら被害者といえども彼女ら『幻想御手を使用した学生達』にも何かしらの懲罰があった可能性も零ではない。
それが、ほぼ無問責。確かに、貴重な夏休みを幾らか棒に振ったが、その程度で済んでいる。僥倖も僥倖だろう。
「まあ、お勤めに励むしかないか……あぁ〜、夏休みも毎日、初春のパンツを確認するつもりだったのに……暇が無くなっちゃったよ」
「永遠に無くしてください、そんな暇!」
飾利の怒声と共に、朗らかな笑いが満ちる。やはり、努力の甲斐はあった、と。何と無しに、窓の外の青空を眺める。
今日も、また真夏日。その空の果て、雲一つ無い虚空。其処に────
「対馬さん、どうかしました?」
「あぁ……いや。何でもない」
微かに見えた気がした『緑光』、その瞬き。幻でなければ、音も無くこの一帯で一番高い電波塔に墜ちた────『緑色の雷光』。それを、気の所為として。
「そうだ、御坂。実は、頼みがあるんだけど」
「何です、改まって?」
記憶に残すのみで、意識の外に。今更、目新しいくらいでは心、踊る筈もない。
それよりも、秘めたる『作戦』の為に。『将を獲んとするなら、先ず馬を射よ』の格言に基づいて。
「この後、付き合って欲しいところがあるんだ。何、早けりゃ二、三十分で終わるからさ」
「はぁ……別にいいですけど?」
「あーら、お姉さまが行かれるのでしたら、私も参りますの」
と、即座に割り込んできた黒子。まるで、美琴を護衛するとでも言わんばかりに。警戒心剥き出しで。
「ああ、勿論。人が多ければ多いほど、ありがたいからね」
「スーパーの安売りか何かですの?」
それを、笑いながら受け入れる。余りにあっさりとした嚆矢のその物言いに、頭に『?』を浮かべる彼女から視線を外す。
時間は十四時半、太陽は南天の頂きに。クーラーの効いた院内を一歩出れば、都市は一日で最も暑い盛りである────…………
………………
…………
……
「現在時刻、十四時三十分────」
勲章代わりの懐中時計を片手に、逆の手に葉巻を燻らせる浅黒い肌の白人は呟く。革の上下に刃金の身を包んだ、強壮たる男だった。
サングラスの奥、其処に在るべきは鋭き眼光。しかし、スモークの強いサングラスからは、全く窺えない。まるで黒い穴のような、そんな気配すら。
「残る猶予は一時間半……その刹那、『風』と『雨』が来る」
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