SS:途中の思い出
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」
「ああそうっすか。じゃあアンタはずっとそこでなよなよしてればいいっす。俺はアンタを頼らず戦うだけっす」
「そして俺は歌うだけ、だ。結局のところ、自分の指針を決められるのは自分しかいない」
少年はこちらを振り向かずに部屋のドアを開けた。
最後に一つだけ、訊く事があったのを思い出す。
「君の相棒の最後の台詞は『くそったれ』だったかい?」
「!?」
少年がガバリとこちらを振り返る。
何故知っているんだ、と言わんばかりにその双眸は見開かれていた。
「彼の一番好きだった歌の歌詞さ。その一言を言えたんなら、あいつは我を貫き通して死んだんだろう。それを聞けて良かった」
= =
ボコボコに打ちのめされて、散々に脅されまくっても――
俺達はまだ倒れちゃいない、ギリギリのことろでしぶとく踏ん張ってる――
何でそんなに辛いのに、俺達は立ち上がって相手を睨みつけるんだ?――
それは、譲れない意地ってやつがあるからじゃないか――
だったら例えナイフで脅されても、爆弾くくりつけられても――
クソッタレ、って一言吐きつけてやれよ――
「その人はどうなったの?」
「知り合いの情報屋によると、後で罠を利用したPKだった事が分かって・・・・・・レッドプレイヤーを殺すRPKになった、らしい。一度だけさっき歌ったのを聞きに来て、それ以降は分からない」
結局人は、本当は理屈より意地で生きたいものなんだろう。
彼にはきっと正義感なんて無かったはずだ。
復讐のために憎い相手を定め、殺しに行ったのだろう。
道徳的には悪事に分類されるかもしれない。それでもやらずにはいられなかったのだろう。
その感情が、最後まで我を貫き通した友達に倣ったものなのか、それともその我を身勝手な理由で散らした相手に対する底無しの憎悪だったのかは確認のしようもない。
ひょっとしたら、俺の伝えたその一言が彼を血染めの道へ誘った可能性も否めない。
「一度漕ぎ出してしまえば、最後には自分の行きたい場所に辿り着いているものだ。もしあいつの進んだ道が間違ってても・・・・・・生きてれば、いつか。根拠もない願望だけど、俺はそう思ってる」
「・・・人を殺したいほど憎むなんて、僕には分かんないや。だって今この瞬間を生きてるのって、とっても嬉しくて楽しい事だもの」
「まぁ、な。でも生きていることが当たり前になってくると、それはそれで辛いことが湧いて出てくる。逃げられないんだ」
自分の剣の柄を指でなぞって、ユウキがポツリと呟いた。
俯いている所為でその顔は伺えない。
彼女は腕利きのプレイヤーだと聞いてはいるが、SAOで本物の殺し合いをしたわけではない。だからこそ、思う事があるのかもしれない。
生還者のキリ
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