SS:途中の思い出
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内されろって言っているのかもしれない――
――今日も、ユウキは俺の話を聞きに来ている。
だから今日は、あの世界で死んだ友達の墓に参りに行った話をすこしした。
彼女はまた、こちらが息をのむほどに真剣なまなざしで俺の話を聞いていた。
前から思っていたが、彼女は人の生き死にに関してどこまでも真剣になれる子のようだ。
ひょっとすれば、俺よりも多くの別れを体験しているのかもしれない。
この時間帯、彼女だけが俺の客になる。語りも歌も、彼女だけだ。
それはこのALOで場所を提供してくれている知り合いたちのおかげなのかもしれない。最初に会ったのはどこぞの安全地帯の片隅だったが、今は小屋の中で一対一。
普段歌わない歌を歌ってがっかりされることもない、と考えれば気楽だが、何故彼女がこの世界での貴重な冒険時間を割いてまで俺の下にやってくるのかは分からない。今まで俺の歌で何かが変わった人は頼まれなくても話してくれただけに、この子は読めなかった。
俺達の生きてる証を形にしてさ、どこかに残しておかないか――
結んだのは俺達で、それをほどくのも多分俺達だ――
悲しいときは、悲しい思いに向き合って大泣きして――
喜びたいときも、やっぱり嬉しい思いに真正面から向かい合う――
お前の心が向く方へ身体を案内してるのさ――
読めないと言えば、結局俺の歌を聞いた後にどうなったか分からない客も沢山いたものだ。
黒猫団とかいうギルドの団長も、いつぞや2人で聞きに来たグリム夫婦も、ある日を境にぱったり来なくなった。死んだのか、心変わりしたのか、もう俺の歌は必要なくなったのか。グリム夫婦が来なくなった理由に関しては後で知る事となったが、知れた方が稀有だろう。
――ユウキにも、いつかその時が来るのかもしれない。
本当の名前も顔も知らないのだから、なおさらに。
前にも言ったが、俺に去る人を止めたりする権利はない。
出来るのは歌ってそれを気にいるかどうか判断してもらうだけだ。
あの時も、そうだった。
= =
「友達が、死んだんっすよ」
中学生くらいだろうか、その少年は生気の無い顔でぼそりと呟いた。
ライブが終わった後の宿屋の一角で、俺とその少年は対峙していた。
彼の友達はうちの常連だったそうだ。
顔の特徴を聞いて直ぐにあの少年だと思い至った俺は、そうか、と返して瞑目した。
こういう事も起きてるだろうと分かってはいたが、こうして聞かされるとその実感はより重くのしかかる。彼は確か聞きに来てはいなかったが、友達がこの路上ライブを聞きに来ていること自体は知っていたということだろう。
「こんな糞みたいな世界でも、歌を聞いてりゃその世界を蹴っ飛ばせる気がしてくるとか言って笑ってて・・・
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