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その魂に祝福を
魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――5
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。もしもあの世にいたら。その時はアタシが蹴りだしてやる。
 目の前の扉を蹴破り、振り向かず先へと進む。あの女の匂いはまだ残っている。どこにいるかなんて手に取るように分かる。
 鬱蒼として朽ち果てた森の奥深く。その先に続く扉を無造作に殴り飛ばす。
 一瞬だけ、そいつは振り返ったが――そのまま何も言わず歩き去る。
 感情を吐き出すには準備が必要だった。そんなことを今さらになって思い知る。再び爆発しそうな感情が、その爆発力を保ったまま鎮まるのを待つ。
 その隙にそいつはさっさと奥へと行ってしまう。だが、慌てることはない。そんな余計な感情を抱く余裕はない。細く息を吐き、その後を追った。
 長い階段を下りると、さすがに気にはなったのか、そいつは足を止める。
 同時、準備が整った。地面を蹴り、一切のためらいもなくそいつを引き裂く――つもりだった、
「くぅ!」
 魔力による障壁によって、あっさりと弾き返される。その女――プレシア・テスタロッサが視線だけで振り返った。つまらないもの――道端にへばりついたガムでも見おろすようなその目がさらに、感情を激昂させた。
 今度は準備など必要ない。ありったけの力を込めて、シールドに爪を立てる。力の差は絶望的だったが――
(この……ッ!)
 距離にすればほんの数十センチ。たったそれだけで届く。
 たとえ魔力では勝てなくとも、直接手が届くなら何とでもなる!
「アンタは母親で、あの子はアンタの娘だろ!」
 シールドを握りつぶし、そのまま胸倉を掴み上げる。そこで初めて、自分が思ったより非情になれていない事に気付いた。そんな事をしている暇があれば、喉元を引き裂いてやれば良かったのに。
「あんなに頑張ってる子に! あんなに一生懸命な子に! 何であんな酷いことができるんだよ!!」
 感情のままに叫ぶ。だが、そこで気づいた。全く意味がない。相手の目には、自分の姿など映っていないのだから。
「が、あ――っ!」
 横腹を貫くように衝撃が走る。冷静さを欠いていたとはいえ、狼の反射神経でも対応できない早さで魔法を発動させたのだと、地面に叩きつけれてから理解する。
 距離が離れ、そしてたった一撃で身動きが取れなくなった。
 力の差は絶望的だった。分かっていたことだ。だが、
「アンタの娘は」
 それでも立ち上がる。叫ぶほどの力はすでになくとも、それでも叫ぶ。
「アンタに笑って欲しくて、優しいアンタに戻って欲しくて、あんなに……!」
 意味がない。腹部を貫く痛みに、妙に冷静な自分が告げた。
 この相手に、自分の言葉は意味がない。決め損なった覚悟を、今さらになって決める。
「あの子は使い魔を作るのが下手ね。余分な感情が多すぎるわ」
 冷酷な言葉。その手にデバイスが握られる。
 今のままでは刺し違えることさえでき
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