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その魂に祝福を
魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――5
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 そして、これは自分が辿りついた未来――新たな世界での記憶である。記憶も、身体も、名前すら失った自分の、新しい物語。その第一節の終わりの記憶である。
 ……どうやら、まんまと罠にはまってしまったらしい。無数の銃弾が飛び交う倉庫街の片隅、コンテナの陰に隠れながら、やれやれとため息をつく。あのチキンな情報屋が自分達をはめるような真似ができるとも思えなかったが――まぁ、利用するのは簡単そうだ。適当におだてて、旨そうな餌の一つも用意してやればそれで事は足りるだろう。なにしろ、自分達もさんざんやってきた事だ。
「クソッ! あのクソ野郎はめがやったな……」
 いつになく、相棒が荒々しい声で吐き捨てる。全く、普段は人の言葉遣いにケチをつけるくせに。まぁ、気持ちは分からなくもないが……しかし、これほど罵倒の語彙が豊富だったとは驚きだ。切れ目ない銃声に負けない勢いで罵声を吐きだす相棒に肩を竦める。
 ともあれ、相棒が先にキレてしまったなら、自分は冷静でいるしかない。二人揃って激高していたら命がいくつあっても足りはしないのだから。
「この状況で言う事か?」
 あのヘタレチキンにお前を出し抜く度胸があるとでも?――冷静に指摘してやると、相棒は露骨に鬱陶しそうな顔で舌打ちした。それにまぁ、向こうにしてみれば足元ばかり見る客を一掃するにはいい機会だったのかもしれない。それに――
 一掃するいい機会だというのは、自分達も同じだ。何せ、目につく限り――周り一面を埋め尽くすのはどいつもこいつも自分達の狙う仇である。
「何か良い手でもあるのか?」
 今日は大猟だな。笑うと、相棒が不審そうな顔をした。当然だ――と、答えてやれたならさぞかし痛快だっただろう。だが、残念な事に自分が何なのかすらろくに思い出せない今の自分にはそれだけの力がない。今手元にある供物は、今の自分がこの世界で用意した代物ばかり。おぼろげながらに覚えている、かつて自分が有していた魔法の粋を集めた供物の足元にも及ばないガラクタばかりだ。しかも、どれもそろそろ限界だった。
 何人かを生贄にしてどうにか回復させたが――お陰で、身体も大分縮んでいた。相棒と出会った頃くらいに……いや、それよりはまだいくらか大きいか。ずり落ちてくる服が煩わしい事に変わりはないが。
「クソ、こんなところで……」
 いくらか覇気を失った顔で相棒が舌打ちする。だが、そんな顔をしなくとも、こんなところで相棒を死なせるつもりなどない。とはいえ、相棒――かつての自分が有していたあの魔術書が手元にない今、一体どうすればいいのか。
 コンテナを穿つ銃弾が、派手に火花を撒き散らすのを見ながら自問する。自分達が追い詰められているのは、もはや否定しがたい事実だ。明らかな窮地。だが、この程度の窮地で膝を屈するような魔法使いはいない。それだけは
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