魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――4
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抜けるのは容易だと言う程度の事である。
(つまり、俺達を始末するよりも、ジュエルシードの回収を優先しているってことか)
そのおかげで、包囲網――監視機械の動きには、法則性がある。それを理解し、魔力さえ抑え込んでおけば、連中の監視網をすり抜けるのは簡単だった。もっとも、
(こんな状況が、いつまでも続く訳じゃあない。どうせ、俺への対策が思いつかずに動けないって程度の話だろ)
正攻法で挑んでくる限り、クロノだけでは勝ち目がない事は分かっているはずだ。しかし、向こうとて素人ではない。このまま俺達を放置することなどあり得ない。始末する方法が思いつきでもすれば、すぐにでも仕掛けてくるだろう。それまでに、フェイトに関係する厄介事に決着をつけておきたいところだ。その方法になのはが利用される可能性は決して低くないのだから。
「でも、ちょっと安心したよ」
「うん?」
微かに、だが。フェイトが笑っていた。久しぶりに見たその笑顔に俺もホッとする。
(フェイトが傍にいるのに気付かなかったってのも情けない話だ)
この子の不安には殺戮衝動も入っているだろう。やれやれ、やはり後始末をアルフに依頼したのは失敗だったと言わざるを得ない。無様なものだ。やはり昔の自分のようにはいかないらしい。……いや、それは言い訳か。詰めの甘さは今も昔も変わらないだろう。
「何か今日は、光も調子がよさそうだから」
ともあれ、フェイトはホッとした様子でそんな事を言った。
「ああ、それは確かに」
その言葉に、アルフも頷く。正直あまり差はないのだが……ほんの僅かに――そして、あくまで一時的なものだが――鎮静魔法が効果を発揮しているのは事実だった。
「まぁな。恩人が遺してくれた特効法だって言ったろ?」
エレイン――二代目ゴルロイス自身が永劫回帰に抗う方法として遺した魔法は、『マーリン』に対する鎮静である。だが、それ自体は未完成だった。いや、厳密に言えば本当に効果があるとエレイン自身が確信を持つ事はなかった。さらに言えば、今さら検証のしようもない。何故なら、かつての自分はついに『マーリン』にはならなかったのだから。
(いや、効果はあったのかもな)
自分にとってそれはある種の保険の――お守りのようなものだった。『マーリン』から受け継いだその右腕を見ればどうしても不安に苛まれる事はある。そんな時には、彼女が遺してくれた魔法を唱えたものだ。それだけで心が落ち着いた。もっとも、今回はその恩恵ではない。
(なるほど、どうりで侵蝕が早い訳だ)
そもそも今自分を蝕む殺戮衝動は、恩師の記憶と照らし合わせるといくつかの違和感がある。調子がよさそうに見えると言うなら、それはその違和感の正体を確かめるべく施した小細工が功を奏した結果にすぎない。
(やれやれ、ようやく事態が思った通りに動い
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