魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――4
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が――それでも、光の歌声を思い出した。昔から、眠れない私をあやし寝かしつけてくれた時の歌。
たくさん傷ついて、少しだけ大人になった――そんな歌だ。決して優しい歌ではない。けれど、不思議と辛い気持にはならない。背中を押され、前向きな気持ちになれる。そんな歌だった。
(あの子にも歌っているのかな?)
かもしれない。今度会ったら聞いてみよう。ちゃんと名前を聞いて。いろんな事を話して。あの子の笑顔を見たい。そう思う。
何で、それができないんだろう。どうして、それができないの?
(そっか……。私が選びたいのは……)
そういう事なのだ。夢の縁で、確かに答えを見つけた気がした。
――世界が終わるまで、あと五日
6
「さて、と……。これはどうしたものかな」
管理局が動きを見せなくなってはや三日。それまで一日一個はジュエルシードを回収していたくせに、三日前から急に動きを見せなくなった。そして、
「せっかくのチャンスなのに……」
フェイトが悔しそうに言う。まぁ、つまり――三日前からジュエルシードらしき反応もどこにも見当たらなかった。
「ばら撒かれたジュエルシードは全部で二一。俺達が持っているのが、合わせて一〇。なのはが回収してるのは精々五つのはずなんだが……」
つまり、あと六つは残っていないとおかしい訳だが。
「誰かが持ってっちまったとか?」
「まぁ、見た目は綺麗な宝石だし可能性はあるが……」
アルフの言葉に、曖昧に頷く。
「だが、いずれにせよこの街にあるなら索敵に引っ掛かるはずだろ?」
「分かんないよ? 綺麗な宝石だし、誰かに売っ払っちまったかもしれないじゃないさ」
「いくら綺麗な宝石だって、加工もしないで売れるとは思えないな。ついでに、そこらの宝石工に加工できるような代物でもないだろう」
そもそも、まずこの世界に存在するものではない。正しい価値を見いだせるかどうかも怪しい。それこそ、ガラス玉と思われて廃棄され焼却炉か埋立地行きの可能性を疑った方が現実的なようにも思う。
「いや、それは笑えないんだけど……」
「うん。掘り返している暇はちょっとないよ……」
「けどな。こうも反応が無いとなると、本当にこの街に落ちてるかどうか――」
そこで、ふと何かが引っ掛かった。
(この『街』に落ちている?)
ユーノもフェイトもそう言った――が、実際のところどこにどうばら撒かれたのか正確なところは分からないはず。つまり、
(前提が間違ってるんじゃないか?)
フェイトのデバイスが照射する海鳴市の見取り図に視線を下ろす。そこには、落下の予測範囲も記されているが――
「ひょっとして、もう少し手前なんじゃないか?」
今の範囲では一番手前――あくまでも俺がいる位置から見て、だが――は湾岸公園だ。
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