魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――4
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混乱の続く新世界において、秘密結社アヴァロンの復権は、世界にある程度の秩序をもたらした。それに関してはさすがのサンクチュアリも否定はできなかった。魔物化はともかく、暴走する魔法使いの数は明らかに減ったのだから。もちろん、アヴァロンの刺客により『減らされた』という事もあるだろうが。
とはいえ、アヴァロンの復権に伴い、当然のように両組織の対立も復活した。それは世界の復興が進むにつれ顕著になっていく。分が悪いのはアヴァロンの方だった。当然だろう。滅んだ世界を守ってきたのはサンクチュアリだ。傷を癒し、魔物を退け、堕ちた人間を赦す。それに対して、徹底して殺しに特化するアヴァロンはどうしても恐怖と嫌悪の対象となる事は避けられない事である。とはいえ、少なからず混乱の続く世界では、その恐怖こそが抑止力として機能しているのも事実だった。
殺すのか。救うのか――結局のところ、両者の対立は新旧世界をまたいで続く事になる。とはいえ、それがかつてのように血みどろの殺し合いにまで発展したかと言われれば……必ずしもそうとは言い難い。少なくとも、両者が並び立ってしばらくの間は。
というのも、新生アヴァロンの掟が、旧世界のものと少しばかり変化していたからだ。当然といえば当然の結果である。かつての『アヴァロン』を参考にしてはいるが、元々はサンクチュアリの思想の元に育った魔法使い達の手によって結成されたのだから。
滅んだ世界の中で唯一の希望であったゴルロイスの思想。それを汚さぬために、あえて破門され――彼らの代わりに必要悪として自らの手を汚す。そう誓った魔法使い達によって結成されたそれは、最期まで二代目ゴルロイスを守り抜いた異端の救済者モルドレットの生き様が強く影響している。もっとも、それはアヴァロンへの復讐を望んだモルドレットにとっては甚だ不本意な結果だったに違いない。ただ、それでも……例え理解は示さずとも否定もしなかったのではないか。新生アヴァロンの生き様を見て、そう考えた事がない訳ではない。
世界を守り抜く。その志を同じくしながら、両者の思想がついに混ざり合う事はなかった。当然だ。サンクチュアリにとってその組織の存在は、己の無力を突きつけてくるものでしかないのだから。その感情が、サンクチュアリの発展を支えたのは間違いないだろう。彼らはより精力的に救済を行っていった。彼らの理想が輝けば輝くほど、新生アヴァロンもまたその理想を汚さぬよう、より多くの闇を吸い集めていった。さらに時代が進み、両者の関係性が変化していっても、構造そのものは大きく変わらなかった。
結局のところ、理性と欲望の間を彷徨うのが人間なのだろう。例え『奴ら』がいなくなろうが――いや、だからこそ。我々はその間を彷徨い続ける。それこそが人間だ。
サンクチュアリが掲げる全てを救いたいという理想も
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