暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/insanity banquet
Fifth day
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てはいるが、選択肢は「はい」「イエス」「分かりました」しか用意されていない。士郎はホールドアップで逆らう意思がないことを告げる。そして、一つ疑問に思ったことを尋ねた。
「いいけど、何でセイバー?」
「彼女の宝具は聖剣ではないですか。頑張れば、悪魔くらい払えそうな気がして」
「いや、悪魔どころか、教会が跡形もなくなる気がするのは俺だけなのか?」
 ごもっともな言葉に、カレンは片言でダイジョウブと告げる。労災保険には入っていると。

 湯呑に入ったお茶を飲み干すと、カレンはそういえばと話す。
「ウリエルという天使を知っていますか?」
 士郎は首を振る。ただでさえ、伝説や神話と言うものに疎いのに、天使の名前などというものを知っているはずがない。彼女はその返答は予測済みのようで続けていく。
「ウリエルは神の炎と呼ばれ、裁きと預言の解説者の役割を持つ天使です。懺悔の天使ともいわれ、地獄に堕ちた人間の魂を拷問で苦しめるとも。ですが反面、ノアの箱舟で有名なノアに大洪水だ起こることを知らせたり、エジプトから出て荒野を彷徨っていたイスラエルの民を光で導いたりする、人間への優しさもまた持っているのです」
 懺悔、という言葉が士郎の胸に引っかかる。もしその天使が自分の元に現れたのなら……。彼の思考はカレンの言葉によって中断される。
「前任のダニ神父が神父らしき仕事をしていたとは思えませんが、私は人々の痛みを理解する、神の僕となりたいと思っているのです。ですから、どなたでも懺悔室には立ち入ってもらって構わないですよ。天使によって裁かれる前に、話した方が苦しくないでしょう。それに、懺悔、というものは案外、人の心の霧を晴らすものかもしれません」
 なぜそんなことを彼女は今言ったのか。士郎が分かり兼ねていると、彼女は時計を見てあっと呟いた。時刻はそろそろ五時半、日が短いため外は結構暗くなっていた。
「それでは、明日お待ちしていますね」
 にっこりと笑みを見せると、彼女は立ち上がる。その姿を見て、ランサーが嫌そうな顔をする。
「帰るのか? 俺はここで飯食って行きたいんだが」
 にっこりとカレンはそれはもう天使のような笑みを見せ、一言。
「フィッシュ」
 衛宮邸からは、赤い聖骸布に包まれた青い狗が、引きずられながら新都に向かっていく姿が見られたという。
 これほどまで、明日が来ることが嫌になったのは初めてかもしれない。士郎は、二人の蜜柑の皮や煎餅の袋を片付けながら、自分の運命を密かに呪っていた。

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