Fifth day
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くすぐる。三つの湯呑をお盆にのせて、士郎はカレンたちの元へ行く。居間に姿を見せた士郎を見て、カレンは口を開く。
「少々、教会で困ったことが起きまして。相談に乗ってもらえないか、と思ったので来てみました」
「困ったこと?」
湯呑を二人の前に差し出しながら、士郎は尋ねる。それに頷き、カレンは士郎に問いを掛ける。
「この前、新都のほうで起きた、殺人事件をご存知ですか?」
「あぁ、まだ犯人捕まってなくて、一家全員が殺されたっていうやつだよな」
普段はそこまでしっかりとニュースを見るタイプではないが、冬木市内で起きた極めて残虐な事件ということで、印象がかなり強いものだ。被害にあったのは、一軒家に住む四人家族。とても仲睦まじい家族で、子供はまだ七歳と十歳という幼さだったとニュースで言っていたのを思い出す。そして、犯人は残虐な殺害方法を取ったとも。死因は、大量出血による失血死と出血性ショック。胸は刃物で切り裂かれ、心臓が抜き取られていたという。聞いただけでとんでもないと思うが、その上遺体は関節で切断されバラバラになっていたというからまた恐ろしい。
目の前に煎餅や蜜柑を並べながら思い出すことでは無かった、と士郎が後悔していると、カレンが衝撃的なことを切り出す。
「実は、あれの犯人を教会で捕獲しまして」
沈黙。
数秒前に言われたカレンの言葉を、脳内で繰り返す。「犯人を捕獲」とかなんとか言っていなかっただろうか、この彼女。聞き間違いかもしれないという希望にかけて、士郎はもう一度尋ねた。
「い、今なんて?」
二度も同じ事を言いたくない、と彼女の顔に書いてあるが彼女はもう一度ゆっくりはっきりと士郎に伝える。
「ですから、その犯人を教会で捕獲した、と言っているんです」
やはり先ほど自分が聞いた言葉は、間違いではなかったようだ。
「な、なんですと?」
若干声を震わせながら士郎は言う。何がどうなると、教会で殺人事件の犯人を保護することになるのだろうか。カレンは士郎のことは置いておいて淡々と続ける。
「正確には、自分から教会に来た、と言えますね。犯人なんだが、このままだと警察に捕まっちゃうから保護してくれ、とかなんとか」
「だ、大丈夫なのか? ていうか、その前に警察に通報すべきだろう?!」
犯人の行方は分かっていないと報道していたニュース。普通、そんな人間が来たら一発で警察を呼ぶと思うのだが、欧州育ちの彼女とは感覚が違うのだろうか。カレンは大きくため息をつく。
「そこが、困ったところなんです」
そこって、警察に通報すべき、という点なのか。そこが問題というと、犯人は有名人だったり、はたまた宇宙人だったりするのだろうか。ごくりと、固唾を呑んでカレンの次の言葉を待つ。
「犯人は彼なのですが、彼ではありません」
思考が半分停止する
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