Fourth day
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罪は、人間皆が常に持っているものだ。罪を犯さない人間など存在しない。どんな素晴らしい賢者だとしても、それは例外ではない。
人が罪を犯すことを、こう表現した人間がいる。人間が誰かを憎んだり羨んだりした時には、その心には小さな棘がある。そして、次第に深く刺さっていく棘は、痛みを与えていく。そんな時に、悪魔は人に囁くのだ。罪を犯せばこの痛みは消える、罪を犯してしまえばもう苦しまなくて済むのだと。人の心は弱い。その囁きを肯定し、自らの判断で罪を犯すのだ。
だが、人は神に心から赦しを乞うことで、罪を犯していようと、その魂は救われる。神はそんな人間を理解し、愛する存在であるから。罪を犯した事実よりも、罪を犯した後にどうするか。人間に必要なのは、その選択だ。
それならば、赦しを願えば全ての人は罪から解放されるのか。それの答えは、否である。ただ一つだけ、例外がある。罪を持って生まれてきてしまった人間は、その罪から解放されることは無いのだ。
その少年は、生まれる前から定められた運命を持っていた。神に最も愛されし御子であり、生まれながらにして罪を背負っている子。矛盾にも見えるその定めは、彼の心を蝕む。
――何故自分は生まれてきた。罪に穢れた自分は、生まれるべきでは無かった。こんなに辛く、苦しい生が待っているのなら、生まれてきたくなど無かった。ボクは、産んでくれなどと頼んでいない!!
暗闇の中、悲愴にくれた声が反響する。少年の金の瞳からは、とめどなく涙が溢れていく。冷たく凍えるようなその涙は、氷の結晶のようだ。涙を流す彼を追い詰めるように、暗闇から憎悪に満ちた声が響いてきた。
――罪の子。
――呪われた子。
――お前は、罪を背負って生きる。
――その生の終わりに地獄へとその身は堕とされる。
――生まれたことを悔いよ。
――その生に呪いあれ。
――悔いよ。
――呪われよ。
何十、何百もの声は呪詛そのもの。彼の存在を、生を、魂を。何もかもを否定し、呪う。普通の人間であれば、この言葉を聞いただけで発狂してしまうだろう。だが、彼は違う。耳を塞ごうともせず、その言葉を受ける。そして、最後の涙が頬を伝うと、彼は顔を上げる。虚空を睨みつけるその姿は、先程の自らの生の悲愴に喘ぐものではなかった。
「それでもっ!!」
彼の叫声によって、呪詛はぴたりと止んだ。彼はふらりと立ち上がると、右手を胸に当て祈るような面持ちで言葉を紡ぐ。
「それでも、ボクは目的を果たす。どんな力を使っても。必ず、必ず!!」
彼の誓いの言葉を聞き終えると、止んでいた呪詛は再び彼に向けて放たれる。
――傲慢だ。
――間違えなく災いが起きる。
――この国に惨禍をもたらす者。
――世界にあの惨劇が再び現れる。
――殺せ。
――殺せ。
――
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