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Fate/insanity banquet
Fourth day
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と聞いてかなり動揺した。無理矢理でも昨日顔色の良くない理由を問い詰めておけばよかった、と後悔したのだ。
――こっちは心配してるってのに、本当にこいつは。
自分の心配も知らないで、と言いたくなるのをぐっと抑える。リンに続き、セイバーも士郎に顔を近付けながら、息巻いて説得を試みる。
「リンの言う通りですシロウ、私はいまいち何があったのかよくは知りませんが、無理は禁物です。美味しいシロウの料理が、もし二度と食べられなくなったら……。考えるだけで恐ろしい!」
 士郎の料理スキルが大河によって奪われた時のことを思い出し、セイバーは必死に訴える。今の彼女にとって、士郎のおいしいご飯が食べられなくなる、というのは死刑宣告に等しい物だ。
 女性人二人の説得も、士郎はうまい具合にかわしていく。
「大丈夫、さっき一成が横にいてくれて、かなり気分は良くなったし。一日、殆ど動いていないから、ちょっとぐらいは仕事しないとな」
「そこまで言うなら止めないけど」
 不満が残っている表情を隠しもせずに凛は言った。士郎はそれには気づいていないようで、冷蔵庫に残っているものを思い出して、士郎は献立を呟く。
「今日は、平目の甘酢あんかけかな」
 平目と魚の名前を聞き、凛は人の悪い笑みを見せて、クロに詰め寄った。
「あら、そこの黒猫は魚よりも肉が好きだったんじゃなかったかしら? それだったら、今日の夕飯んは要らないんじゃ……」
「シロウが作ってくれるのであれば、何でも美味しく食べるのである! 肉でも、魚でも!」
 士郎という部分を強調すると、クロは廊下をパタパタと走っていく。とりあえず、手洗いうがいをと士郎が考えていると、彼の横に時臣が寄ってくる。
「僕、手伝います。料理は、あんまり得意じゃないですけど」
「ありがとう、時臣」
 凛が彼を弟と称したが、こんな可愛らしい存在なら、自分の弟にもなってくれないかと思った士郎だった。
 
 料理があまり得意ではないと言った時臣の言葉は、嘘ではなかった。甘酢のあんと軽く油で揚げた平目と野菜を絡めるだけの、至極簡単な料理のはずだった。だが、現実はそう上手く行かず、主に時臣が四苦八苦することとなった。パプリカを包丁で切ればまな板から飛び、生姜を摩り下ろそうとすれば生姜が飛び。と、時臣がいた台所は、どうしてそんなにも食材が宙を舞うのか不思議な空間だった。彼が入った瞬間だけ、重力の法則が無視されたかのようになってしまうのだ。やっとのことで料理を終えた士郎は、底知れぬ疲労感に包まれることとなる。
だが、実際の味はセイバーや凛からは好評であった。それがせめてもの救いだというように、彼女たちからおいしいという声を聞いた時、時臣は心底ほっとした表情を見せていた。
そして、夕食の後の団欒の時間、テーブルの上の籠に入っているみかんを剥きな
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