Fourth day
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殺せ。
少年は右手を高く上げ、その薬指にはまる指輪に力を込める。瞬時に、彼のいた暗闇の空間は裂け、彼の目の前は赤に染まる。地面に転がる人間の手足。血溜まりは彼の服の裾を汚す。
「そう。これでいい。何も間違っていない」
力なく、彼は前に進んでいく。地に落ちた、彼と同じ人間の残骸を踏みつけながら。
「……や」
誰かが自分を呼ぶ声がする。
「……みや」
慣れ親しんだ友の声。
「衛宮!」
ぱちりと目を開く。ぼんやりと見えるそこには、心配そうに士郎を覗き込んでいる、彼の親友である柳洞一成の姿があった。彼の顔を見たことで、自分が今学校の自分のクラスにいることを思い出す。意識が飛んで、夢を見ていたため、瞬時に判断が出来なかった。
士郎は瞬きをして、彼の顔に焦点を合わせた。
「ごめん一成。ちょっと、ぼーっとしてた」
何の話だっけ、と聞くと彼は話の続きではなく、士郎の顔色を窺いながら尋ねた。
「顔色あまり良くないが、大丈夫か?」
昨日の朝、凛とアーチャーにも言われたことを思い出す。実際、今まで夢を見ていた頭はぼーっとしているし、体もだるい。今の自分の体調は万全とは言いにくい。だが、きっと困っているであろう彼を蔑ろにすることは出来ない。士郎は笑みを作って答えた。
「ああ、大丈夫。ちょっと、寝不足なだけだから」
彼の返答を探るように見ていた一成。ふぅと息を吐き出し、彼を見つめる。
「……そうか」
短くそう返答をすると、彼はぺしりと士郎の頭を軽く叩いた。
「俺からの頼みは、また今度で構わない」
だから、早く体調を戻せ、と言われ士郎は苦笑しながら頷く。すると、パタパタと廊下から誰かが走っている足音が聞こえる。そ主の足音は士郎の教室の前で止まった。
「衛宮、ちょっといいか」
教室のドアに立つ慎二から声を掛けられる。今の足音の主が彼だということに気が付く。一成と慎二はお互いの存在を認識すると、苦々しい顔をする。このままでは、何時ぞやの二の舞になると思った士郎は、慎二の用を済ませてしまおうと立ち上がる。教室のドアへ一歩踏み出そうとした時に、鋭い痛みが頭に響く。
誰かに呼ばれているような。
もう一歩、士郎が踏み出そうとするが、足元がぐにゃりと歪む。視界が揺れ、自分の体が支えられなくなるのを感じた。
「衛宮っ?!」
「衛宮!!」
意識が遠くなる。必死な友人二人の声が遠く聞こえてくる。それに答えようと手を伸ばすが、その手は何も掴むことは無い。
堕ちていく。
先ほどの夢の中のように。暗闇が支配する世界へと。
そこに彼はいた。
艶めく黒髪を風になびかせる。彼の表情を映さない瞳は、希望を失ったように濁っていた。真っ直ぐ士郎を見つめる彼に、問いを投げかける。
「君は、誰なんだ」
初めて彼を見た時
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