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Fate/insanity banquet
Third day
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いたが。
 彼に残された両親の形見は、赤い一つの石。小学校に上がる前に叔母から渡されたものだった。彼女もこれが何かは知らない。ただ、彼女の義姉が出産の時に、必死に握りしめていた物だったとは聞いていた。渡されたその日から、時臣は石を光に透かして覗いてみることをよくしていた。そして、その中に人影を見る。石の赤とは違ったオレンジ。包み込むようなその色を持つ人影は、彼の小さな支えであった。
 そんな他人から見れば不幸な毎日を過ごしていた彼に、つい一週間前に更なる悲劇が訪れた。彼の唯一の保護者である叔母が、病を患い入院することとなったのだ。心の病が体の不調まできたし、このまま放っておけば命も落としかねないと判断をされた。もちろんまだ、十歳の彼をそのままにしておくわけにはいかない。
どうしたものかと考えていた時に、時臣はあの黒いセイバーに襲われることとなった。明確に自分を殺そうとする殺気に、驚かないわけがなかった。彼は必死に逃げた。
そして時臣の前には、彼が現れたのだ。オレンジ色の光を持った、衛宮士郎が。彼を見た時に、時臣は直感で感じ取っていた。彼は味方であると。だから、彼と共にいることを望んだ。そして、それが受け入れられたとき、安堵したのだ。
荷物を纏めると言って、一度家に帰った時、彼は叔母に会った。数日彼が家に戻らなかったというのに、彼女は心配するどころか、逆に自分がいる時よりも生き生きとしているようにさえ見えた。やはり、彼女にとって自分は負担でしかないと時臣は冷静に判断していた。必要最低限の荷物を持って家を出ようとする彼に、彼女は一言声を掛けた。
「あなたは、初めから私と居るべきじゃなかったのね」
言葉の意味は測りかねない。時臣は彼女に背を向けたまま、一言さよなら、と言い十年の時を過ごした家を後にした。

 時臣が物思いにふけっている間、凛が決めていた目的地についたようだった。街を埋め尽くすように並ぶビルの中の一つ。凛はこの買い物の前にアーチャーにインターネットで子供服の店を調べさせた。どことなく父に似て、優雅さを漂わせているようなこの少年に、Tシャツを着させるわけにはいかないと、彼女が勝手に考えたからである。ちょっとおしゃれな店のホームページを見て、凛は時臣を連れて買い物に行くことを決めたのだ。
 三人がビルに入ろうとした時。
「待て」
 感情の薄い、声で呼び止められる。凛が振り返ると、そこには黒いゴシックロリータのワンピースを着た少女が立っていた。
「あんた、黒セイバー?!」
 驚きの声を上げたのは凛だったが、それ以上に怯えているのは時臣だった。彼を庇うように凛は、一歩前に出た。黒セイバーを睨みつけて、彼女は自身の中にあった疑問をぶつけていた。
「士郎から話を聞いた時も思ったけど、あんた何でこの子を追いかけまわしてるの? 確かに、
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