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Fate/insanity banquet
Third day
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に行くと、砂埃に汚れたクロを肩に乗せた凛をはじめとする四人が息を切らしながら立っていた。のんびり煎餅を齧っていたセイバーとライダーも、騒ぎを聞きつけ玄関に集まる。凛は大きく息をつくと、先程起きたことを説明する。
「士郎の言ってた、黒いセイバーと、よく分かんない黒いバーサーカーに追われたのよ。冬木って、こんなに物騒な街だったかしら」
 聖杯戦争中は確かに酷かったけど、と呟く彼女。それを他所に、桜はにっこりと挨拶をしている。
「先輩、お邪魔します」
 見なれた彼女と、その横にいる見慣れない少年を見て士郎は彼女に聞く。
「桜、その子は?」
「あ、私の、弟みたいな子です」
 桜の説明に、雁夜は後を引き継ぎ名前を名乗る。
「間桐雁夜って言います」
 ぺこりとぎこちなくお辞儀をする彼のその名前を、セイバーはどこかで聞いたことがあるようだと感じていた。時臣の名前を聞いた時と同じ。だが、またもよく思い出せないので考えることは放置する。
 弟、と聞いた士郎は気になることを尋ねる。
「桜の弟ってことは、慎二も?」
 慎二という名を聞き、桜は黒い笑みを浮かべる。
「兄さんは関係ありませんよ。私だけの、弟です」
「あ――、そうか。うん、分かった」
 彼女から漂う気に、これ以上深く聞かない方がいいと考えた士郎はそこで話題を変える。
「そうそう、夕飯は、鍋にしようと思ってたんだ。さっきランサーが、鯛を持ってきてくれたから、鯛ちり鍋」
 鍋と聞き、彼女たちの表情が明るくなる。特にセイバーだが。桜は用意を一緒にすると言い、時臣と雁夜も手伝いを申し出た。凛は調べ物をするらしく、自分の部屋に戻っていく。
士郎が洗濯物をたたむべく居間に戻ろうとすると、慌てた様子のアーチャーが戻って来ていたらしく、彼にぶつかり洗濯物をぶちまけるという事件も起きたりしていた。
 夕飯時には、鯛を釣ったランサー、隣から何やら匂いを嗅ぎつけやってきた大河、バイトを終えて食事を求めてきたバゼットも交えた宴会騒ぎになっていた。
 煩くもあるけれど、それが楽しい。そう思いながらせっせと仕事をする士郎は、少し夜が更けるのを怖く感じていた。

 この感覚は三度目だった。
ここ三日連続で見る、誰かの記憶。あまりにもリアリティに溢れているそれは、普通に眠っても眠った気がしないというのが難点だ。そして、この夢が誰の記憶なのかも分からない。なぜ誰のものか分からない夢を見続けるのか。何によって見せられているのか。疑問符ばかりが浮かぶが、今日も夢は記憶を紡いでゆく。
美しい黒の髪の少年。以前の夢で「王」と呼ばれていた彼は、大理石で作られた玉座に腰かけている。彼は、眉を寄せて辛そうな表情を浮かべていた。思いつめた顔をしている彼は、大きく首を左右に振ると思い切ったように玉座から立ち上がる。
「王
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