暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/insanity banquet
Third day
[14/24]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
似ている子供なら、儂の元で、こき使うのも悪くないと思ったまで」
「あんたが、俺にいきなりそういうこと言うから、さっき攻撃したって気づいてるか、じじぃ」
 鋭い視線を向けながら彼は言うが、またも臓硯は華麗にスルーしている。彼は桜に射抜くような視線を向けた。
「桜、こやつは似てはおるが、あやつとは違う。それを努々忘れるなよ」
 そこまで言うと、臓硯は椅子からよろよろと立ちあがる。ハサンが駆け寄り、彼を支えながら歩いていく。二人が部屋を出たことで静寂がその場を包む。
 似ている。だけれど、違う。それは、当たり前だ。彼の話を聞けば、彼が間桐で生まれた人間でないことは明らかだ。それでも、彼に出会えた今の自分は歓喜している。
 気が付いていたら、桜は彼を抱きしめていた。
「お、お姉さん?!」
 豊満な胸に押し潰されながら、顔を赤くする彼だが、桜はより強く手に力を入れる。
「雁夜君は、私が守る。今度は、私が守る番」
 あの時は分からなかった。なぜあの人が、あんな体になってまで自分の元に戻って来たのか。でも、今なら少し分かる気がする。誰かが愛おしいと、誰かを守りたいと。そういう思いをしった今の自分ならば。
 雁夜は、恐る恐るといった様子で桜の背中に手を回す。彼女の暖かさを強く感じる。それに安心を覚えながら、少年は彼女に体重を預けた。
 などというやり取りを説明したいのだが、今の凛は雁夜に興味津々な様子だ。雁夜のほうは、いきなりじろじろと見られることに驚きながらも、特に嫌がりはせずに大人しく立っている。
 一通り眺め終わったのか、凛は桜に視線を移す。
「で、どこから誘拐してきたの?」
 によによと人の悪い笑みを浮かべてからかって来た凛に、桜は顔を赤くしながら反論する。
「してません! 姉さんと一緒にしないでください!」
「それ、どういう意味よ!」
 彼らの保護者のような二人が言い争っていると、凛の後ろに隠れていた時臣の近くに雁夜が近づいてくる。
「俺は、間桐雁夜っていうんだけど、お前は?」
 マトウカリヤ。
 その名前を聞いた時に、ずきりと時臣の頭に痛みが走る。その痛みが何によるものなのかは分からない。だが、目の前に立つこの少年が、マトウカリヤだということに驚きを感じている自分もあった。マトウカリヤは違う、と。
 黙ってしまった時臣に、雁夜は心配そうな顔を向ける。それに気が付くと、時臣は口を開いた。
「僕は、ときおみ……、遠坂、時臣」
 遠坂、という姓は凛が名乗るように言ったものだった。彼が衛宮邸に来たその日、彼女は時臣に言ったのだ。自分は時臣の姉になる。そして、時臣は自分の弟になるのだ、と。だから、これからは遠坂時臣と名乗ってほしいと。
 驚きながらも、時臣はそれを了承した。自分の前の姓に執着があまりなかった、というのもある
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ