Third day
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似ている子供なら、儂の元で、こき使うのも悪くないと思ったまで」
「あんたが、俺にいきなりそういうこと言うから、さっき攻撃したって気づいてるか、じじぃ」
鋭い視線を向けながら彼は言うが、またも臓硯は華麗にスルーしている。彼は桜に射抜くような視線を向けた。
「桜、こやつは似てはおるが、あやつとは違う。それを努々忘れるなよ」
そこまで言うと、臓硯は椅子からよろよろと立ちあがる。ハサンが駆け寄り、彼を支えながら歩いていく。二人が部屋を出たことで静寂がその場を包む。
似ている。だけれど、違う。それは、当たり前だ。彼の話を聞けば、彼が間桐で生まれた人間でないことは明らかだ。それでも、彼に出会えた今の自分は歓喜している。
気が付いていたら、桜は彼を抱きしめていた。
「お、お姉さん?!」
豊満な胸に押し潰されながら、顔を赤くする彼だが、桜はより強く手に力を入れる。
「雁夜君は、私が守る。今度は、私が守る番」
あの時は分からなかった。なぜあの人が、あんな体になってまで自分の元に戻って来たのか。でも、今なら少し分かる気がする。誰かが愛おしいと、誰かを守りたいと。そういう思いをしった今の自分ならば。
雁夜は、恐る恐るといった様子で桜の背中に手を回す。彼女の暖かさを強く感じる。それに安心を覚えながら、少年は彼女に体重を預けた。
などというやり取りを説明したいのだが、今の凛は雁夜に興味津々な様子だ。雁夜のほうは、いきなりじろじろと見られることに驚きながらも、特に嫌がりはせずに大人しく立っている。
一通り眺め終わったのか、凛は桜に視線を移す。
「で、どこから誘拐してきたの?」
によによと人の悪い笑みを浮かべてからかって来た凛に、桜は顔を赤くしながら反論する。
「してません! 姉さんと一緒にしないでください!」
「それ、どういう意味よ!」
彼らの保護者のような二人が言い争っていると、凛の後ろに隠れていた時臣の近くに雁夜が近づいてくる。
「俺は、間桐雁夜っていうんだけど、お前は?」
マトウカリヤ。
その名前を聞いた時に、ずきりと時臣の頭に痛みが走る。その痛みが何によるものなのかは分からない。だが、目の前に立つこの少年が、マトウカリヤだということに驚きを感じている自分もあった。マトウカリヤは違う、と。
黙ってしまった時臣に、雁夜は心配そうな顔を向ける。それに気が付くと、時臣は口を開いた。
「僕は、ときおみ……、遠坂、時臣」
遠坂、という姓は凛が名乗るように言ったものだった。彼が衛宮邸に来たその日、彼女は時臣に言ったのだ。自分は時臣の姉になる。そして、時臣は自分の弟になるのだ、と。だから、これからは遠坂時臣と名乗ってほしいと。
驚きながらも、時臣はそれを了承した。自分の前の姓に執着があまりなかった、というのもある
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