Third day
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で命を落とした人。そして、私を……。
少年を見て言葉を失っていると、向こうから桜に話しかけてきた。
「お姉さん。まだ、小学生の見た目の俺に、おじさんってひどくない? 名前は、合ってるけどさ」
目の前の彼は、頬を膨らませながら不満げに言う。先ほど自分の名前を呼んだ時との違いに驚きながら、桜は矢継ぎ早に尋ねる。
「おじさんは、私のこと覚えるから、さっき桜ちゃんって言ったの? あなたは、雁夜おじさんなの?」
桜の問いかけに、彼は嫌そうな顔をしながら答える。どうにも、「おじさん」というのが嫌そうだった。
「おじさんじゃないって。なんとなく、お姉さんの名前みたいだなって思って呼んだだけ」
「そう、なんだ」
はぁと息をつくと、彼は口を尖らせながら言う。
「っていうかさ、そのお姉さんが言うおじさんに、俺が似てるって、失礼だよね。おじさんってことは、三十歳は過ぎてるんでしょう。それに似てる小学生って、すっごくへこむ」
言われてみればそうだ、と思い桜は呼んだことの無い呼び方でかれを呼んだ。
「ご、ごめんなさい。じゃあ、か、雁夜君?」
「うん、何、お姉さん」
にっこりと自分に笑顔を見せる。あの人は自分に、こんな笑顔は見せてくれなかった。いつも辛そうに顔を歪めて、無理やり作った笑顔を。いや、あの人とこの目の前の彼は違う。そう割り切り、
「雁夜君は、どこから来たの?」
「うーん、なんていうか。この家の養子なった感じ?」
またまた言葉を失ってしまう。そんな話、今の今まで聞いたことがなかった。この頃自分が家に帰っていなかったとはいえ、義兄が知っていれば、自分に話していただろう。桜があまりの衝撃に目を丸くしていると、彼は指を折りながら話していく。
「俺ってさ、小さい頃から、『マキリ』っていう言葉を知ってた。事あるごとに、俺が無意識に『マキリ』って言ってるのを聞いて、父さんと母さんが気味悪がっててさ。その上、病気になってこんな見た目になっちゃったし。あの人らにとって、ますます気味の悪い子供になった時に、俺を養子に欲しいって言って来た人がいた」
それがあの人、と二人のやり取りを椅子から黙って見ていた臓硯を、彼は指さした。
「それで、とんとん拍子で、俺はマキリの養子になったわけ」
はい、おしまいという彼の話だけでは、まだよく分からない。桜は臓硯を振り返り尋ねた。
「おじい様、これは一体……」
聞いてから彼のボケが結構進行していたことを思い出す。あ、無理かもと思うが、その予想は外れて、彼はしっかりとした口ぶりで話す。
「ふん、何の因果か知らぬが、あれに似た子供が不遇な生活を送っていると耳に挟んでな」
「別に俺は、あの居心地悪い家、嫌いじゃなかったけど」
棒読み口調で横から口を挟んだ彼の言葉は、臓硯には無視される。
「あやつに
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