Third day
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終末の老人介護。首をぎゅっとね」を持って衛宮家に帰ろう、そして、もう一度最初から最後までじっくり読み直そう。そう考えながら、桜は応接間につながる扉に手をかけた。
「おじい様、それで何の御用で……」
重い扉を開けた先にいるであろう妖怪に声を掛けた桜は、部屋の中を見た時に息を飲む。椅子に座っている臓硯、そして彼の前に立つハサン、とここまでは分かる。問題はその次だ。ハサンの手から伸びる鎖によって、ぐるぐる巻きにされている白い髪の主が地面に倒れている。
一体これは何だと思っていると、黒い長身が動いた。
「ま、孫娘殿――!」
桜の声を聞き、若干涙声でハサンが彼女の元にやってくる。その間も鎖は手に握られているので、白い髪の少年は床をずるずると引き摺られている。うめき声が聞こえたのも、気のせいでは無さそうだ。
「孫娘殿、来て下さったんですね。もう私だけでは、この方を押さえられなくて、どうしようかと思っていたんですよ!」
この方と言い、床に転がる少年を指さす。顔は下を向けていて分からないが、桜には白髪の少年などという知り合いはいない。彼女はハサンに詰め寄りながら尋ねる。
「この方って、一体誰なんですか? 見たことない子供が、いきなり自分の家で、鎖に巻かれて転がされてたら、さすがの私もびっくりします」
ハサンは申し訳なさそうな声で説明している。
「それが、私も彼が誰かは、詳しくは分かっていないのですが……。魔術師殿に言われて、待ち合わせ場所に行くとこの少年が立っており、なんやかんやでここに連れ帰るやいなや、いきなり魔術師殿に攻撃を仕掛けてきてですね。ちょっとこれじゃいかんと思って、簀巻きにしてみたのです」
簀巻きというのは、鎖でも使う言葉なのだろうか、と少々不思議に思いつつ。臓硯に攻撃、と聞き桜は目を光らせる。
――おじい様にそこそこの恨みを持ってるってことよね。
もしかしたら、自分と共に戦ってくれる存在かもしれない。いや、戦うというか一方的に弄るというか。ふふふ、と黒い笑みを見せる桜。とりあえず、期待を持ちながら少年の前にしゃがむ。少し緩くなった鎖のおかげで、少年は顔を上げて桜の顔をその瞳に映す。
彼の瞳に自分の姿が映る。
「さくら、ちゃん?」
時が止まったようだった。
彼が呼んだ自分の名前。あの時、苦しそうに、どこか寂しそうにその名前を呼んだ人を。桜は知っている。
「雁夜、おじさん……?」
なぜ自分が、目の前の彼をそう呼んだかは分からない。だが、自然と出てしまった。あの時と同じところなんて、白の髪しかない。大きな大人であった彼は、こんなにも小さな子供だ。濁ってしまっていた左目も、醜く歪んでいた傷も、そこには無い。何もかも違うはずなのに、どうしてもこの少年が間桐雁夜だと考えてしまう。
間桐雁夜は、十年前の聖杯戦争
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