Third day
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思い出す。
「分かった。あ、そういえば時臣君と、クロは?」
「クロが朝、庭に出て行って帰ってこないから、時臣君に探して着てって頼んだの。でも、こっちもまだ帰って来てないわよね……」
凛の言葉に、なるほどと頷く。
「そっちも見てくるよ。あ、そうだ言い忘れてた。二人とも俺の代わりにありがとう」
士郎の口から紡がれた何気ない感謝の言葉に、凛の顔は一気に赤くなる。そして、お決まりの文句を言おうと思った時には、すでに士郎の姿はキッチンには無かった。
そして、凛から仕事を言いつけられたセイバーが何をしているのかというと。
「ふはははは! セイバー、我が来てやったぞ! さぁ、我妻となるための準備を……」
「はぁ……」
本気で怒りを覚えていたのは、最初の数回。何度も何度も同じことを繰り返されると、だんだんと怒りを通り越して、感情は呆れに変わるのだということを、セイバーはここ半年で学んでいた。
「英雄王、あなたは、ほぼ毎日こんなことして飽きないのですか?」
彼女の前に立つのは、英雄王ギルガメッシュ。黒のライダースーツに身を包み、金の髪と赤の瞳を持つ姿は、誰が見ても美しいと答えるだろう。黙っていれば。本当になぜこの男は口を開くのだろうかと、何とも理不尽なことをセイバーは考えていた。
「お前が、我の妻となるその時まで、諦めるなどということをするはずがなかろう。さぁ、今日こそ……」
ギルガメッシュが彼女に近づき一歩踏み出した時、二人の間に割って入るように黒い物が姿を現した。そのシルエットを見て、彼は呟いた。
「ん? 猫」
「クロ」
セイバーに名まえを呼ばれると、ちらりと一瞬彼女に視線を向ける。だがすぐに、ぴんと耳を立てて、金色の瞳にギルガメッシュを映す。そして、みーと鳴きながら、のこのことギルガメッシュに近づいていく。
「なんだ。王である我に、何か頼み事でもあるのか?」
繰り返し、みーみーと鳴くクロに声を掛ける。クロは行儀よくギルガメッシュの前に座ると、みゃあと甘えた声を出す。実に可愛い仕種だと、セイバーは感じていた。だが、この黒猫には大事なおまんじゅうを取られたという苦い体験もあるため、どうしてもただこの猫がギルガメッシュに撫でられたくてここに来たとは思えない。
だが、そんな彼女の考えはギルガメッシュには通じるわけもなく。ギルガメッシュは、クロが彼に甘える姿に気を良くしたようだった。
「ふっ、その愛らしさに免じて、我に抱き抱えられることを許すぞ、猫よ」
ギルガメッシュがクロに向かって右手を差し出すと、クロはひょいと乗る。そして、彼の腕の中にすっぽりと収まる。セイバーもこの猫のように素直になればいいものを、と考えているとクロは体を動かし、ギルガメッシュを正面から見る。
そのまん丸の瞳が彼の姿を映したと思った瞬間。
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