Second day
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「士郎に気を取られてて気づかなかったけど……」
凛は自分の前の少年をじっくりと見る。そして、今は亡き自らの父のことを思い出す。自分の目標であった父と、どことなくこの少年は似ている。否、この少年は自分の父、遠坂時臣自身なのだと。彼女の勘がそう告げていた。
「お父様……」
小さく呟く。彼の持つ青の瞳は、父と自分を繋ぐもの。それが懐かしくて、心を締め付けるようで。彼女の口から、それ以上の言葉は出ない。凛は、自分の手をきつく握りしめていた。
「遠坂、とりあえず、何があった説明してもいいか?」
彼女が感傷に浸り、押し黙ったところで士郎が提案をする。そこで凛は、自分は彼らに何が起こったのか全く知らないことに気が付く。凛は頷き、士郎に説明を求める。
そこで、士郎は商店街で時臣に出会ったこと、彼の落し物を届け、そこで黒いセイバーに襲われたこと、ある少年に助けられたことを、大雑把に説明していく。一通り話し終えた後、凛は大きくため息をついていた。
「大体、分かったわ。また、士郎がめんどくさそうなことに巻き込まれてることが」
それだけじゃないと言いたかったが、八割はそれで片付いてしまう気がして士郎は口を噤んだ。話を聞いた上で疑問に残るのは、時臣の士郎の家に住まわせてほしいという願いだ。なぜ彼はそんなことを頼むのか、それは知らねばならないと考える。
「で、時臣君。あなたは、どうして士郎の家に住ませて欲しいって思ったの?」
かつての父の名を呼び捨てにすることに少し戸惑いもあったもの、凛はさして気にせずに普通に呼ぶ。時臣は、一つ一つ噛みしめるように言葉を紡いでいく。
「両親を亡くした後、この石を形見として渡されました。そして、本当にたまになんですけど、この石の中に人影が映るんです」
日の光が石の中を通り、赤が更に煌めいている。時臣は石を両手で包み込むようにして持つ。
「士郎さんは、そこで見たことがあるような気がして、もしかしたら助けてくれるかもって。さっき助けてくれた人は、迷っちゃだめだって言っていたから、なおさらそう思ってしまって。いきなり言われても迷惑ですよね。すみません」
彼の言葉を聞いていた士郎は、気がかりなポイントを見つけて、尋ねる。
「助けてくれるって、何から?」
彼が助けを必要としているのならば、自分は、彼を助けたいと思う。それはいつもの士郎の行動であるようで、少し違うものでもあった。誰かにその選択を選ぶように導かれているような。時臣は、先程の襲撃を思い出すのか、表情をわずかに歪めていた。
「さっきの女の人みたいな人たちです。ここ一カ月くらい、ずっとあんな風に知らない人たちが来て。その度に、なんとか逃げていたんです」
一カ月。それほど長い間、一人で彼が先ほどの黒セイバーのようなサーヴァントから逃げ続けていた。それを
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