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Fate/insanity banquet
Second day
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る。
「何っ?!」
 先ほどまで彼の手に握られていた杖は、鋼鉄の刃を持つ剣へと形を変えていた。
「よっと」
 手を捻り剣を払う。彼が剣を振るおうとするのを見て、彼女は間合いをとるために飛んだ。
「錬金術、か……?」
 分子を集め再構成し、全く違う物質に作り替えることの出来る、かなり高い技術を必要とする術だ。
黒セイバーは、冷静に目の前の敵について考える。相手がいきなり現れ、無策で自分を迎え撃とうとしていると考えていたが、その認識は間違っていたのかもしれない。最初から、自分の襲撃を予測していた? この場所には、この魔術師が戦いやすいように様々な術が施されている? 憶測に過ぎないが、もしそうだとすれば単騎の自分は不利なのかもしれない。
――主は、不利と思ったら退却を許すとおっしゃっていた。この状況を不利と取るか……。
自分の相手は、変わらず笑みを見せている。それが、不敵なものだと思ってしまうほど、黒セイバーは得体のしれないこの魔術師に圧倒されていた。
「……」
 無言で彼を睨みつけると、黒セイバーは剣を収める。
「また、必ずその命を消し去るために参る」
 彼女の姿は黒い光の粒となり、空気に溶けるように消えていく。彼女が霊体化してこの場から去った、ということが分かった。
 士郎がほっと息をつき、少年を抱きしめていた手を離す。今まで黒セイバーと対峙していた彼は、へたりと地面に座り込む。
「あぁよかった。相手が勝手に勘違いして帰ってくれて。フォルネウスの力のおかげかな。耐魔力の強いセイバー相手に効くか心配だったけど、大丈夫だったし」
 大きく息を吐き出して、独り言をいう彼の前に士郎は立つ。正面から彼の顔を見て、どきりとする。世界史の教科書に載っていそうな彫刻に、命を吹き込んだように整った顔立ちをしている。彼の美貌に見惚れていると、はっと気が付く。彼は、あの黒猫から姿を現したのだと。
「助けてくれて、ありがとう。えっと、君は……」
「たくさん君と話したいことはあるんだけど、この姿はあまり持ちそうにないんだ」
 眉を下げて申し訳なさそうな顔を見せる。彼は立ち上がり、士郎を真っ直ぐ見つめる。士郎よりも大きい背は、彼を見下ろすような形になった。
「魔力をもう少し回復できれば、色々と話せると思うから、猫のクロを頼んでもいいかな」
 彼の言い方は提案の形をしていたが、その声音は有無を言わせぬ力強さがあった。士郎は彼の金色の瞳を見つめ返す。自分の心の中に生まれた一つの確信。
 彼は敵ではない。
 それが浮かんだだけで、士郎が彼に返す言葉は決まっていた。
「あぁ、分かった」
 士郎の強い瞳を見ると、彼は安心した顔を見せた。
「ありがとう。ボクも、クロも、君のことが大好きだよ」
 そう言うと、彼は士郎の髪をかき上げ、その額に唇を落と
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