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Fate/insanity banquet
Second day
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放たれた一撃を前にして、とりあえず避けみれば良かったとか、令呪を使って本物のセイバーを呼び出せばよかったとか、行動をした後に公開するのは、人間の習性なのかもしれない。彼を庇ったところで、斬撃を生身で受けて二人とも無事でいられる訳がない。
あ、選択完全にミスった。
 衛宮士郎は、ここ一年で何度目かの死を覚悟した。
 だが、その決定的な瞬間はいつまでたっても訪れない。薄く目を開けると、自分たちの前に一匹の黒猫がいる。紛れもない、昨日自分の拾ってきたクロだ。漆黒の剣士から放たれた破壊の斬撃は、その黒猫の前で動きを止めていた。
「え……」
 思わず漏れた声は自分のものか、それとも少年のものか、はたまた黒セイバーのものだったのか。
 クロは、みゃおんと声を上げる。それを合図にしたように、黒の斬撃は跡形もなく消え去った。文字通り、消えたのである。初めからそんなものは、放たれていなかったように。クロはちらりと士郎を窺うが、すぐに目の前の黒セイバーに向き直る。クロの尻尾がくにゃりと揺れた。それに目を奪われた次の瞬間、士郎の前には先ほどまでいた可愛らしい黒猫ではなく。風になびく漆黒の髪の持ち主の背中だった。
「『吾輩は猫である。名前はまだ無い』っていうのは、夏目漱石の小説の冒頭だったね。前に一度読んだことがあるけれど、ボクはこの物語が好きだよ。人間を客観的に見ている猫が好きなんだ」
 ふふっという笑い声を漏らしながら言う。その柔らかいボーイソプラノは、士郎が聞き覚えのある声だった。だが、どこで聞いたものなのか思い出せない。
 突然の彼の登場に、黒セイバーも戸惑いの表情を顔に浮かべていた。ただでさえ自分の斬撃を目の前の彼に防がれたのだ。飄々としている彼の行動に、彼女は僅かに恐怖を感じていた。得体の知らないものに対する、未知の恐ろしさ。それを目の前に立つ少年は持っていた。彼女は、剣を構えながら少しだけ後ずさりをしていた。
「あぁ、まだ名乗っていなかったね。そうだな。ボクの事は、ソロモンとでも呼んでくれないか?」
 名前を告げ、彼はパチンと指を鳴らす。すると、彼の手元に彼の身長と同じくらいの長さの杖が現れる。彼がぐっと握りしめるその杖は装飾は無く、木を削っただけのシンプルなものだ。
「さぁ、ボクが相手になろう。闇に囚われし姫君」
 彼の相手になる、という言葉で黒セイバーは戦闘意識を取り戻したようだった。足に力を籠め、地を強く蹴る。彼は鎧も付けていない。武器となりそうなものは持っていない。杖を持っていることから、魔術師なのだろう。セイバーのクラスを持つ自分が、遅れを取る相手ではない。
 ――もらった。
 彼が切り裂かれた胸元から血をまき散らす、すぐ先の未来が分かる。剣を振り上げ、目の前の彼の胸元に振り下ろす。
 だが、その刃はもう一つの刃によって防がれ
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