First day
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すと、少年は誰かの元に近づいていく。
「怖い夢でも見たかい? それとも、何か不安なことでもあって眠れないのか?」
誰かは何も答えない。その代わりに、少年にあるものを突き出す。それを見た時、少年は僅かに眉を寄せる。
「あぁ、そうか。ボクに引導を渡しに来たのか」
誰かが突き出したもの、それは長く伸びた刃を持つ、一振りの剣。少年はそれに怯えるどころか、誰かに向けて軽蔑しきった嘲笑を浴びせた。
「君はどうしても、ボクを殺して自分のものにしたいようだけれど。残念だったね。君がボクをここで殺しても、ボクは自分の魂を浄化し再び甦る。そうして、何度でも君の邪魔をさせてもらうよ」
そう言うと、少年は大きく手を広げた。彼の表情は穏やかなもので、これから殺される人間とは思えないものだった。
誰かは動く。一瞬画面が黒に変わる。そしてすぐに、視界いっぱいの赤が映し出された。おびただしい量の血の赤が神殿の床を染め上げる。初め純白の色をしていた少年が纏っていた衣服は、無残に切り裂かれ血を吸い赤黒い色をしている。
そして、少年は笑みを浮かべたまま目を閉じていた。白磁のその頬には、血しぶきが付着していた。少年の胸元は切り開かれ、一つの臓器が誰かによって抜き取られていた。それは心臓。
誰かは笑っていた。
抜き取った心臓はまだ暖かい。愛する者に贈るように心臓に口づける。唇を濡らした血を、赤い舌で舐めとる。今までにない快感がそこにはあった。誰も決して触れることのできなかったその人を、自分は手に入れた。確かに自分は彼をこの手で殺したのだ。
これで、王は自分のものであると。
狂気に歪みきった声で、神のための神殿で高らかに笑い声をあげていた。
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