First day
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とはいいんだよ!」
大河は士郎の膝の上から子猫を奪うと、両手で持ち上げる。高い高いの要領であやすようにする。
「いいか、今日からお前はクロだぞー」
キョトンとしていた子猫だったが、金色の瞳をくるりと動かす。そして大河と目を合わせると、にゃおんと声を上げた。
クロは士郎の腕の中で眠っている。まだまだ小さいこの猫は、恐らく生まれてから半年と経っていない気がする。そう考えると、クロは親とはぐれてしまったのか、はたまた親がいないのか。どちらにしても、飼うと決めたこの猫はしっかり育てなければ、という士郎の母性本能が働いていた。
その時、縁側に立っている一人の男の存在に気が付く。
「アーチャー!」
凛と契約したサーヴァントである彼は、いつものトレードマークの赤の外套は着ておらず、黒のシャツを着ている。どうせこの家に来るのなら、夕飯も一緒に食べればいいのに、といつも思うことを口に出そうとすると、彼の方から近づいてきた。
「衛宮士郎、その猫……」
「クロがどうかしたのか?」
とりあえず今は大人しく寝ているクロに探るような視線をアーチャーは向けていた。危険なものを見るかのような目つきに、士郎は思わず姿勢を正してしまう。しばらくクロを見ていたかと思うと、不意に彼は身を翻す。
「……いや、私の杞憂のようだ。気にするな」
そう告げると彼は粒子に姿を変え、零体化してしまう。一体何のために現れたか分からない彼に、小さな苛立ちを覚える。
「何なんだよ……」
ため息とともに吐き出された士郎の言葉は、冬の夜の空気に溶けていった。
その夜、士郎は夢を見た。以前、セイバーの過去を見た時のような感覚が夢の中であった。
そんな夢の中に現れたのは、一人の少年の姿だった。大理石で出来た彫刻のような肌、黒の艶やかな髪、宝石を埋め込んだかのような光を放つ黄金色の瞳。華奢な体を飾る細やかな刺繍の施された衣服、彼を飾る豪華な装飾品の数々。世界中の美しい物を、彼に集めたかのように思えるほど、その少年は美しかった。
少年の姿がはっきりとするにつれて、ぼやけていた彼の周りの景色にも焦点があってくる。石で造られた建物、天井は高く体育館のように広いそれは、神殿のような場所だと理解する。少年は、神殿の奥に置かれている、大きな箱の前に立っている。その箱の表面を大事そうに撫でていた。
沈黙が支配していた神殿に、一人分の足音が響く。少年は顔を上げて、後ろを振り返った。
「あぁ、君か」
穏やかな、天使のような笑みだった。少年は自分の元に近づいてきた、誰かに向かってその笑みを見せていた。
「どうしたんだい。こんな時間に君がここに来るとは、驚いたよ」
驚いたと、言っているが少年は笑みを絶やさない。それよりか、本当に驚いているようには全く見えない。箱から手を離
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