First day
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引く。
「ご飯の用意、出来てるのよ。今日は、リンとサクラが作った中華。私も、手伝ったんだからね」
褒めて、と言わんばかりの彼女に、セイバーが近づく。
「イリヤスフィール、私も手伝いましたよ」
「セイバーが手伝ったのって、味見だけじゃなかったかしら?」
にやにやと笑みを見せて、凛は言う。彼女に言い当てられ、セイバーはさっと顔を赤らめた。
そんなやり取りすらも、微笑ましくて。士郎は子猫を抱きながら、家の中へと足を進めた。
「先輩、お帰りなさい」
「遅いぞー士郎!」
着替えを済ませた士郎が座敷に入ると、後輩である間桐桜、そして彼の保護者である藤村大河の姿があった。大河は座敷机の真ん中を陣取っており、一方の桜はエプロンを付けて皿に乗っている食事を運んでいた。先ほどのイリヤの言葉通り、今日の夕飯は中華料理のようだった。皿に乗っている、海老チリや酢豚、ちょっとある特定の人物を思い出す麻婆豆腐が並んでいた。何か全体的に赤くね? と思うが、気にしないことにする。
士郎はキッチンに向かい、戸棚を開ける。乾物を置いている場所から、煮干しの入った袋を取り出す。猫というと、どうしても魚のイメージが強い。きっとこの子猫も魚が好きなはずだと踏んで、士郎は袋を持って食卓へ戻っていく。
食卓の料理に興味を示してはいるが、子猫は特に行動は起こさず、じっと士郎の席に座っていた。再び座敷に戻ってきた士郎の姿を見ると、嬉しそうな表情を漏らした。士郎が席に着くと、続いてセイバー、凛、ライダーも席に着く。並べられた豪華な料理の数々を見て、自分も負けていられないと密かに士郎が思ったのは秘密である。
子猫の方は、士郎が袋から出した煮干しをどんどん口に運んでいく。無限の食欲とも見えるほどの食べっぷりは、あまり今まで食事にありつけなかった野良の厳しさからかもしれなかった。幸せそうに煮干しを食べるその姿は、実に可愛らしいものだ。
一通り食卓の上の料理は無くなり、皆が箸をおいたところで、士郎は先ほど買ってきたどら焼きの袋を見せる。
「今日の夕飯を皆に任せちゃったから、そのお礼」
紙袋を渡されて、嬉しそうな顔をする面々。特にセイバーの表情は、今日一番と言っていいほど生き生きとしていた。
「それで、おまけにおまんじゅう貰ったから、これはセイバーに」
はい、と手渡されキラキラと目を輝かせる。
「これは、黒糖まんじゅうですね。おまんじゅうの皮の黒糖の味と、中のこしあんが絶妙な味を醸し出すのです。士郎、大好きです!」
まんじゅうが包まれているビニールを取り、口に運ぼうとした瞬間、ゴムボールのように素早く跳ねた黒いものが、セイバーの手からおまんじゅうを奪っていった。その犯人は、先ほどまで煮干しをくわえていた子猫だとすぐに分かる。
「あぁっ、この猫! 私のおまん
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