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Fate/insanity banquet
First day
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猫の方は、かりかりと士郎のズボンの裾を引っかき、また腕に乗せてくれと言いたげだ。士郎はひょいと子猫を抱き上げる。再び士郎の腕に収まると、満足気な表情になる。
「私は猫がいても構いませんが、イリヤスフィールは確か猫が苦手ではありませんでしたか?」
「あ、そうだった。すっかり忘れてたな」
 イリヤスフィール、士郎の義理の姉であり、あざといロリっ子は猫が嫌いである。虎聖杯をめぐるアホな戦いの時に、ネコらしき生物を見ただけでも、かなり混乱していたため、今回の完全なる猫を見た時の反応は、前回以上になってしまうだろう。
 やはり返すべきか、士郎が一瞬そう考えると、子猫はまさに捨てられた子猫のうるうるとした瞳で士郎を見上げてくる。
「うっ……」
 うるうる攻撃を受けたのは士郎だけではなく、凛とセイバーもだった。こほんと咳払いをすると、凛は口を開く。
「まぁ、とりあえず家に入りましょうよ。寒いし。イリヤをどうやって説得するかは、後から考えればいいしね」
「そうだな」
 そう言い、ようやく三人と一匹は玄関へ向かう。引き戸を開け、「ただいま」と声をかける。
「おかえり、シロ――……う?」
 姿を現した白い雪の少女、イリヤスフィールは大好きな弟の姿を目に映すと同時に、彼女の天敵である猫を見ることとなる。さぁっと彼女の顔から血の気が引き、ただでさえ白い彼女の肌は白を通り越して、青白くさえなっているように見えた。
「ね、ね、猫―――――!!」
 悲鳴を上げる彼女に、士郎は慌てて駆け寄る。まぁ、彼の腕の中には彼女が悲鳴を上げた原因の猫がいるのだが、それには異が付いていない。
「大丈夫だよ、イリヤ。この猫は、結構大人し……くはないな。いきなり引っかいたり猫パンチしたりするし……。あ、でも可愛い奴だから、きっと大丈夫で……」
「ムリムリ、無理よ! 絶対猫って、がりって引っかくもの。地味に深く広範囲が傷になって、絶対長いこと痛いに決まってるもの!」
 絶対に無理、ともう一度叫ぶ彼女。彼女の目には涙も浮かんでおり、結構本気で嫌がっているようだ。どうしたものか、と士郎が思っていると、子猫はずいっと顔をイリヤに寄せた。
「ふぇ?」
 子猫は、涙で濡れていたイリヤの頬を舐める。ざらざらとした舌が、くすぐったく感じる。
「ちょっと、くすぐったいよ」
 笑い声を上げるイリヤを見て、士郎はほっとする。なんだか分からないが、イリヤ的にこの子猫はオッケーらしい。
「シロウがどうしても、っていうなら飼ってもいいのよ」
 子猫の顔を撫でながら、イリヤスフィールは彼に言い聞かせるようにいう。
「まるで、お母さんみたいだな、イリヤ」
「だって、私はシロウのお姉さんだもの」
 胸を張って彼女は答える。すると、子猫もにゃぁんと鳴き声を上げた。イリヤスフィールは、士郎の手を
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