First day
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彼は急ぎ足で衛宮邸への道を急いでいった。
士郎の腕の中の子猫は、最初は大人しく収まっていたが、家が近づくにつれて、もぞもぞと動き始めていた。紙袋の中のどら焼きのにおいが気になるのか、紙袋に鼻を摺り寄せたり。士郎の手の甲をぺろぺろと舐めてみたり。気まま勝手に動く姿は、先ほど子供たちを恐怖に陥れた子猫と同一の存在か少し迷うところである。
石垣が続く先に、衛宮邸の門が見える。そして、夕日に照らされながら佇む、人影を見つける。人影は士郎の存在に気が付いたようで、彼に向かって手を振った。
「シロウ!」
ふわりと揺れる金髪、そして見慣れた白のブラウスと青のスカート。腹ペコ王、衛宮家の食費増加の原因の一因である、彼のサーヴァントセイバーだ。彼女を見た時に、自然と笑みが漏れてしまうのは、いつもの事だ。
「セイバー、ただいま」
「お帰りなさい、シロウ。おや」
この一年で何度も繰り返された言葉を、今日も口にする。ふと、セイバーの視線が、自分の抱えてるものだということに気が付く。士郎は、紙袋を差し出しながら言う。
「これ、どら焼き。みんなの分とおまけで貰ったおまんじゅうも入ってるぞ」
「今日は、どら焼きの日なんですね、シロウ大好きです! じゃなくて!」
差し出されたどら焼きの袋に目を輝かせたセイバーだっただ、雑念を振り払うように首を左右に振る。そして、士郎の腕の中にいる子猫を指さす。
「こっちです、こっち。この猫どうしたんですか?」
セイバーの声に反応し、子猫はちらりと彼女を見る。だが、すぐに興味無さそうに士郎の腕に顔をうずめる。その仕種にセイバーが羨ましそうな顔をしたことに、士郎は気が付いていない。
「あぁ。何か懐かれちゃって、離れてくれないから、連れ帰ってきちゃったんだ」
ははは、と空笑いをする士郎の後ろに、にゅっと新たな人影が現れた。
「それが、人間じゃなくてよかったわねぇ、衛宮君?」
予想外の声に、体をびくりと揺らす。士郎が振り返ると、そこには衛宮家の居候の一人、黒髪ツインテールの遠坂凛が立っていた。
「と、遠坂」
彼女の士郎への視線は、恐ろしく冷めている。それに気圧され、少し後ずさりをしてしまう。と、セイバーが現れた時には特に反応を示さなかった子猫は、凛の姿を見ると行動を起こす。
士郎の腕からするりと抜けだすと、凛の胸元目掛けて跳躍する。何も構えていなかった凛は、子猫を受け止めると同時に尻餅をついてしまう。
「な、何?」
子猫は凛の瞳をじっと見つめる。空に浮かぶ星のように光を放つその目に、自分自身の姿が映る。数秒間目を合わせると、子猫は鼻を鳴らし、凛の元から離れる。
「何でかしら。ものすごく、今、この猫に馬鹿にされた気がするんだけど……」
スカートについた砂埃を払いながら、凛は子猫を睨みつける。子
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