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東方
共産主義という名の妖怪
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 妖怪の持ちたる国。
 ソ連が、世界で唯一の妖怪の国であることは、誰もが知る常識である。
 国内では、人間と妖怪が共存し、繁栄している。
 しかし、周辺の人間諸国にとっては脅威だった。


・資本主義を否定する共産主義。

・民主主義を否定する一党独裁。

・宗教を否定する科学的社会主義。

・人類の脅威となる妖怪たち。


 敵対する理由としては十分である。
 また、建国以来鎖国を続けたことも不気味だった。  
 資本主義陣営、民主主義国家、宗教勢力、人間至上主義者。
 周辺諸国は、団結し、対ソビエト包囲網を形成した。
 世界一の国土をもつソ連は、敵対国家にぐるりと囲まれている。


 それでも、大規模な戦争にならなかったのは、ソ連の国力が圧倒的だったからである。
 過去に何度も、侵略されたが、すべてにおいてソ連は圧倒的な勝利を収めてきた。
 それなのに、彼らが賠償を請求したことは一度もない。
 だからといって、友好的でもない。徹底的に外との交流を禁止していた。
 ゆえに、ソ連の実情を知る者は少ない。
 各国は、必死になってスパイを送り込もうとしたが、全て失敗した。
 CIAやMI6(現SIS)ですら、一度たりとも成功しなかった。
 彼らは、この恐るべき防諜力を「モスクワの赤い霧」と呼んだ。


 それとは反対に、ソ連は世界中にスパイ網を構築していた。
 民衆は、KGBの諜報員たちによって意図的に流布された「ソ連は恐ろしい国である」という噂を信じた。
 かくして、ソ連VS世界という構図が描かれたのである。
 この奇妙なにらみ合いを、人々は「冷戦」と呼んだ。
 

 実は、ソ連は、裏で人間国家や宗教勢力が敵対するように仕向けている。
 その理由は、ソ連への「恐れ」を、妖怪の糧とするためだった。
 文字通り、「地上の楽園」となっているソ連をそのまま紹介すれば、恐れなど吹っ飛んでしまうだろう。
 だからこそ、ソ連は外国との交流を禁止し、「閉鎖的で恐ろしい国」だと思わせるのだ。
 そのような裏事情など知らず、今日も世界は、ソ連を、妖怪を、恐れている。
 いつか世界が革命されてしまうのではないか、と恐怖するのだ。
 恐れを食べた妖怪は力を増し、強くなった妖怪をさらに恐れる。
 そんな、好循環が出来上がっていた。


「お姉さま、また妖怪の失踪事件が発生しました」


 扉を開けて、クレムリンの執務室に入ってきたのは、10歳ごろの容姿で、背中の羽に無数の宝石を下げた少女。
 500歳を超える吸血鬼、フランドール・スカーレットKGB長官である。
 人間ならばとんでもない長寿といえるが、妖怪の中では若手と言えた。


「はあ、またなの?私たちソ連に喧嘩
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