第四章 誓約の水精霊
第三話 セーラー服
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なんちゅうらやましことやっとんじゃあっ!!」
興奮が収まらない様子の二人に、呆れたような笑みを向けると、それぞれに突きつけていた指を曲げると、勢い良く放ち……二人の額を打ち抜いた。
「くわっ!!」
「のふッ!!」
バチンではなくバガン! という音が鳴るほどの勢いで額に指を叩き付けられた二人は、それぞれ奇妙な悲鳴を上げると、両手で額を押さえしゃがみ込んでしまう。
「ったく、少しは落ち着け」
しゃがみ込む二人を、士郎が見下ろしていると、ふらふらと立ち上がったギーシュが、涙で少し潤んだ目を士郎に向ける。
「い、いや済まないシロウ。ちょ、ちょっと興奮じてしま、あ」
ギーシュの鼻から新たな鼻血がたらりと流れる。
「ちょっと強すぎたか? すまなかったな」
苦笑しながら士郎がギーシュに謝罪すると、ポケットからハンカチを取り出し差し出す。
それをギーシュは、首を振りながら受け取る。
「いやいや、これはシロウのせいじゃないよ。これは、さっき……の」
士郎の目が鋭くなり、睨みつけるようにギーシュを見下ろすと、ギーシュの言葉が小さくなっていく。
「それで?」
冷ややかな士郎の声に、だらだらと汗を流し始めたギーシュは、明後日の方角に顔を向ける。
「そ、それで、あ〜……と……そっ……そうっ!! あ、あの可憐な装いをその、ね、プレゼントしたい人がいるんで、その……」
「ミス・モンモランシのことか?」
あっさりと言った士郎の言葉に、ギーシュの顔が固まる。
その様子にふっ、と笑みを浮かべた士郎は、ギーシュの肩にぽんっ、と手を置いた。
「あれは、水兵の服を俺が手直ししたものだ、欲しいのなら、ミス・モンモランシーに合うように縫い直して渡そうか?」
「え、い、いいのかい?」
「そんなに手間じゃないからな、そうだな、夕方には出来るだろうから、その頃に取りに来い」
ギーシュが戸惑いながらも嬉しげに言うと、士郎は肩を軽くすくめながら応える。
そして、ギーシュたちに背中を向けると、シエスタが逃げていった先に向かって歩き出した。
そんな士郎の背中を、ギーシュたちが見つめていると、唐突に士郎が振り向き、ギーシュに笑いかける。
「好きな子がいるなら、あまり他の女の子に声をかけないことだな」
軽く手を振りながら去って行く士郎の背中に、二人の怒声が響く。
「「お前が言うなあぁぁぁぁッ!!!!」」
その日の……夜。
艶やかな緑色の長髪を後ろでまとめたロングビルは、魔法学院の職員に用意された己の居室で、とあるポーションを調合していた。
理知的な顔に細っそりとしたフレームの眼鏡を掛け、微かに眉間に皺を寄せ、時折机
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