第3章 揺れる想い
3-3 雪解け
雪解け
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よ、それ」ケンジは怪訝な顔をした。
「マユミちゃんに訊きたい事があるんだよ」康男が少し赤くなって言った。
「あの……」マユミは困ったような顔でその小太りの男とケンジを交互に見た。
「こいつは、」隣のケンジがむすっとした表情で言った。「俺と同じ部活の康男だ」
「よろしく」康男はぎこちない笑みを浮かべてバカ丁寧なお辞儀をした。
「で、マユに何の話だ?」
「マユミちゃんには、本当にもう彼氏がいるんすか?」
「え? あ、あの……」
「お、俺、コクろうと思ってたんすけど……」康男は真っ赤になっていた。
マユミは慌てたように言った。「ご、ごめんなさい」
「ほら、やっぱホントの事だったんだよ」後ろに立っていた拓志が康男の肩に手を置いた。「諦めな」
「だ、誰なんすか? その彼って。お、俺たちの知ってる男っすか?」
「どうでもいいだろ、そんな事」横からケンジが無愛想に言った。「マユと彼とはラブラブなんだよ。おまえが首を突っ込む隙はない」
マユミはケンジの顔を見て恥じらったように笑った。ケンジもその視線を受け止め、にっこりと笑った。
「ちっ! だめか、やっぱり……」
康男は肩を落とした。
その哀れな姿の友人の背後から拓志が言った。
「にしても、ケンジ、おまえ妹とずいぶん仲良しだな」
ケンジは肩をすくめた。
「当たり前だ。兄妹なんだから」
そしてマユミの肩に手を掛け、二人の男に背を向けた。「じゃ、俺たち帰るから」
二人を軽くあしらうように、小さくひらひらと手を振りながら去って行くその後ろ姿を眺めながら、康男と拓志は囁き合った。
「あんなとこマユミちゃんの彼氏に見られたらどうするつもりなんだろうな……」
「ケンジも同じだろ。やつの彼女とか言う女があれ見たら引くだろ。あれじゃ思いっきりシスコンだぜ」
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2013,7,26 脱稿(2014,6,28大改訂)
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