第3章 揺れる想い
3-3 雪解け
雪解け
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言えば、おまえのこのショーツ、いつもと違う感じだけど……」
「これサニタリーショーツって言ってね、内側が防水加工されてるんだよ。生理中用の下着」
「へえ、そんなのがあるのか」
「それにナプキン付けてるから、ちょっとごわごわしてるでしょ」
マユミはケンジの手を取り、自分の股間に導いた。
ケンジは指で、そっとその部分を触ってみた。「ほんとだ。大変なんだな、女のコって」
「ケン兄、出したい? 今」
「えっ?」
「エッチしたくない?」
ケンジは少し考えて言った。「我慢する」
マユミは切なそうな目で兄を見つめ、言った。「じゃあ、キスして」
「うん」
ケンジは頬を赤らめ、マユミの頬に指を這わせながらそっと唇を重ね合った。
◆
――明くる8月15日。火曜日。
空港のロビー。ケネスは大きなリュックを背負って、ケンジの高校水泳部のコーチと握手をしていた。
「今度は来年の夏か? 日本に来るの」
「はい。その予定です」
「楽しみにしてるからな、部員たちも待ってる」
「おおきに。感謝します」
ケネスはにっこりと笑った。
カナダに帰国する便を待って、彼と、短期留学していたケンジの高校の水泳部のメンバー、コーチを含む関係者、頭頂の薄くなった教育委員会の教育課長らがロビーの一画に溜まっていた。
一通り、その見送りの人物にあいさつをして、ケネスは少し離れた所に立っていたケンジとマユミの所にやって来た。
「寂しくなっちゃう」マユミが言った。
「いろいろ親切にしてもろうて、感謝しとるわ。マユミはん」
「こっちこそ、いっぱい心配してもらっちゃって……」マユミはちらりとケンジを見た。
「一年後、待ってるから。今度はずっと俺んちにホームステイしろよ」
ケネスは二人の肩に手を置き、顔を近づけて小声で言った。「実はな、みんなには内緒なんやけど、」
「どうした?」
「今度はな、わいら家族、永住するするために来日するんや」
「ほんとに?」マユミが大声を出した。
「ずっと日本に住むのか?」
「秘密やで、二人にしか明かさへんねんで」
「そうか! 良かった! 俺、おまえとはずっと親友でいたいと思ってた」
「わいもや」ケネスは笑った。「来年、再会したらよろしゅう頼むわな」
ケネスはマユミに手を差し出した。マユミはそれを握り返した。
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柔らかくて温かな手だった。
「それまで、アツアツの関係でおるんやで」ケネスは二人に向かってウィンクした。
ケネスの後ろ姿が出発口のゲートに消えた時、ケンジとマユミの背後から声がした。
「ケンジ」
振り向いたケンジが言った。「何だ、康男に拓志。どうした?」
「おまえを呼んだが、おまえに用はない」
「何だ
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