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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
異聞 第四次ティアマト会戦(その4)
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「貴官は何を言っているのかね、エーリカちゃんがそんな事をするはずが無いだろう」
「……はあ? エーリカちゃん?」

我ながら間抜けな声を出していただろう。ロボス元帥がバツが悪そうに咳払いした。
「貴官は何を言っているのかね、ハニートラップなど有るわけがないだろう。我が軍がそんなくだらない小細工に引っかかるはずが無い」
「はあ」

今からでも敵の左翼部隊を攻撃するべきだと進言しようとした時だった。オペレータが震えるような声を上げた。
「敵軍、イエロー・ゾーンを突破しつつあります……」
何時の間に! 何時の間に敵はイエローゾーンを突破してきた! ロボス元帥が慌てて右手を上げた。

「敵、射程距離に入りました!」
「撃て!」
悲鳴のようなオペレータの声にロボス元帥の声が応え、勢い良く右手が振り下ろされた……。



帝国暦 486年 9月13日   ティアマト星域  シュワルツ・ティーゲル  フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト



事前に説明は受けていた。大体どうなるだろうと想定もした。しかし実際になってみるとやはり驚きが有る。ミューゼル艦隊は当初あった左翼の位置から遠く移動し今では右翼のさらに右、反乱軍の左翼の側面に展開している。そして帝国軍は中央、右翼の主力部隊とミューゼル艦隊によって反乱軍の中央、左翼を半包囲状態にあった。

『酷い混戦だな』
『全くだ。ミュッケンベルガー元帥も当てが外れて怒っているだろう。それとも泣いているかな』
ミッターマイヤーとロイエンタールの会話に同感だった。我々を犠牲にして反乱軍に勝つというミュッケンベルガー元帥の目論見は完全に崩壊した。

それだけではない、帝国軍は酷い混戦状態の中に有る。総司令官ミュッケンベルガー元帥は遠征軍を指揮統率出来ているとは言えない。皆目の前の敵の撃破に専念するのが精一杯の状態だ。ロイエンタールが言った“泣いている”と言うのは皮肉でも誇張でもないだろう。俺なら間違ってもその立場になりたいとは思わない。

この乱戦状態にあって唯一組織的な行動と秩序を保っているのはミューゼル艦隊だけだ。つまりこの艦隊の動きが会戦の勝敗を決める。そう、ミュッケンベルガー元帥は勝つためにはミューゼル艦隊の力を必要とする。元帥はミューゼル提督を押さえつけようとする目論見も失敗した……。

ミューゼル艦隊はまだ本格的な攻勢には出ていない。今動いても乱戦に巻き込まれるだけとミューゼル提督は判断している。反乱軍の攻勢が限界点に達するのを待ち、攻勢に出るつもりだ。

『それにしても“あーん”は無いだろう、“あーん”は』
皮肉に溢れた口調だな、ロイエンタール。随分嬉しそうじゃないか。
『羨ましい事だ。しかし皆の前であれは少し……』
ミッターマイヤーが笑うとロイエン
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