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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
異聞 第四次ティアマト会戦(その4)
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私の予想が当たっているのだとしたら恐ろしいほどに用心深い男だ。女性士官であるヴァレンシュタイン少佐を自分の配下に加えたのも自分の知を隠す為だろう……。滑稽な事をしていると周囲には思わせつつ、その裏で勝つために策を練る男……。

ヴァレンシュタイン少佐の声が聞こえる。
『リンゴは後々バターでいためますから少し酸味の強い物を選びましょう。出来る事なら多少果肉の硬い物をお薦めします』

ツインテールの少女がリンゴを手に取ると包丁をあてた。器用にくるくるとリンゴを回し始める。それにつれてリンゴの皮が剥かれていく、途切れることなく皮が剥かれリンゴが丸裸になった。鮮やかな手並みに皆が感嘆の声を上げる。彼女が二つ目のリンゴを手に取った。同じように途切れることなく皮が剥かれリンゴが丸裸になった。これで丸裸になったリンゴは二つ、渦巻き状に剥かれた皮も二つ。感嘆の声はさらに大きくなった……。



宇宙暦 795年 9月13日   ティアマト星域  アイアース  ドワイト・グリーンヒル



帝国軍の左翼部隊が急速に前進している。だが帝国軍の中央と右翼の前進速度はゆっくりとしたものだ。そのため左翼部隊は孤立しているのではないかと思えるほど我々に近づいている。一体帝国軍は何を考えているのか……。斜傾陣による時差攻撃、当初我々が考えたのはそれだった。しかしそれにしても左翼部隊の突出は度が過ぎている……。

罠、だろう。スクリーンに映る若い女性の姿を見ながら思った。帝国軍は左翼部隊の孤立を強調している。指揮官のあいだからは先制攻撃をするべきだという意見も有ったがロボス元帥は相手の行動意図を掴んでから攻撃すべきだと却下した。妥当な判断だろう。帝国軍は左翼部隊を囮として同盟軍を誘き寄せようとしているのだ。こちらが無秩序に攻撃するのを待っている。敵の誘いに乗るべきではない。

このおかしな放送も同盟軍の目を帝国軍左翼部隊に向けようとする作戦の一つだろう。戦闘中に美味しいアップルパイの作り方? おまけに衣装を見ればメガネ、巨乳、ロリ、ネコ耳、ツインテール、ミニスカ……。エーリカ・ヴァレンシュタインと言ったか、自分に注意を引きつけようと必死だ。帝国軍も詰まらん小細工を弄する事だ。

『はい、これでアップルパイの完成です。では試食をしてみましょう』
エーリカが出来上がったアップルパイを切り分けていく。包丁の入り具合から見ると確かに美味しそうだ。フレデリカはこんなパイを作れるだろうかとちょっと心配になった。

彼女が切り分けたアップルパイの一つ皿に載せた。パイの断面がアップで映される。蜂蜜色になったリンゴとサクサク感のあるパイ生地が実に美味しそうだ。コーヒーにはとても合うだろう。

『ビッテンフェルト提督、こちらへ』
エーリカが呼びかけた。少し
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