オーバーロード編
第10話 探しに行く
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か、だと思う」
「死んだ――この世からいなくなったことになってのメリットは」
「安全が図れる。特に自分を狙う人たちから逃れる意味での安全」
「じゃあ貴虎兄さんは…!」
光実は肯いた。――生きている。裕也が何らかの手助けをして生き延びさせた。その可能性が高い。
「こうしちゃいられないわ。すぐにでも貴虎兄さんを迎えに行ってあげなきゃ」
ベッドを降りようとした碧沙を、光実は両肩を掴んで慌てて止めた。
「待って待って。すぐに動いたらプロフェッサー凌馬たちに嗅ぎつけられる。あの人たちだって馬鹿じゃないんだ」
「あ……ご、ごめんなさい。でも、戦極さん?」
「うん。オーバーロード捜索1回目で兄さんの訃報だよ? 何かあったなら絶対一緒にいたあの人たちが怪しい。裕也さんも多分、口止めされたか脅されたか」
「貴虎兄さんが……あの人たち、そんなに……」
しゅんとしていた碧沙だったが、ふいに光実の肩に頭を預けた。
本当に小さな声に続いて、堪えきれない嗚咽が聴こえた。
「貴虎兄さん、生きててよかった……っ」
光実は狼狽えたが、意を決して碧沙の背中を撫でてみた。すると碧沙も光実の胴に両腕を回し、一層強くしがみついて来た。
(一人占め――したいけど、ダメだよね。『たか兄さんに何かあったら、ヘキサとぼくで助けてあげる』って母さんのお墓で約束したんだから)
親の顔も覚えてない光実の中にある、唯一の「親」に関係する思い出。
苦笑し、光実は優しく妹を抱き締めていた。
貴虎の死を兄妹が知らされてから、1週間後。光実と碧沙は決行した。
ラボのクラック維持装置をあらかた破壊したところで、光実は変身を解いた。
これで、いずれはこの大クラックは閉じ、ユグドラシルの人々はヘルヘイムに自由に入れなくなる。自分と碧沙の行動にある程度の自由が約束されたことになる。
避難を告げるアラームに反し、ラボに人が駆け込んで来た。
戦極凌馬と湊耀子だった。
「これは何の真似だ? 光実君」
「兄さんを探しに行きます」
「別に探しに行くのは自由だ。問題は二つ。君が碧沙君を連れていること。そして、クラック維持装置を破壊したことだ」
もくもくと煙と火を上げる、装置だったものの残骸。
光実の後ろには隠れるように碧沙が立っている。
(だからどうした)
龍玄に変身してブドウ龍砲を連射すれば、こんな機械のカタマリなど簡単に壊せる。
ユグドラシル内では、主任の弟で凌馬の部下である光実なら、碧沙を連れ出した口実など簡単にでっち上げられる。
「妹が兄を探しに行きたいと思うのは当然の心理でしょう? それに、これは壊しておかないと、あなたたちに邪魔されかねない」
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