覇王居らずとも捧ぐは変わらず
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後の発言に軍師の二人は口を開け放っていた。戦争は人の命を使う……だというのに、事も無さげに経験と言い放つ彼女に恐怖を感じて。
――どうして驚くんだろう。私達は兵を強くする為に必要な犠牲を払う事になるけど、その兵隊さん達の命の重さを心に乗せて、乱世を終わらせないとダメなのに。
命を数扱いしてはいない。ただ、月と詠たちでは見ている場所が、視点の高さが……違い過ぎた。
あなたはどう思いますか……秋斗を再び見た月の目はそう問うていた。
「クク、袁家との大戦が経験値稼ぎか、面白い」
「い、いえ。“彼女”もそう思っているかなと――――へぅっ」
自身の発言の大きさに気付いて、慌てて付け加える月は、秋斗にくしゃくしゃと頭を撫でられていつもの口癖を零す。
「ゆえゆえの予想ならきっとそうだと――――」
「こらっ!」
「ぐへっ!」
「すぐに頭撫でるなって言ってるでしょ!」
みるみる内に茹で上がっていく親友を見て、漸く自分を取り戻した詠は秋斗の頭を掌で叩いた。
確かに月は可愛いけど……ぶつぶつと呟く彼女に、真桜は口に手を当てて笑いを堪える。朔夜は不足気に唇を尖らせ、きゅむきゅむと掌を握っていた。
来る静寂に緩くなりそうだった空気が戻された頃、詠はため息を一つ。
「で? あんたは月が言った事以外も考えてるんじゃないの?」
ジト目で見られて秋斗はお茶をもう一度飲んで喉を潤した。
ほう、とため息をつくと皆の視線は彼に集まり、次に口から飛び出す言の葉を待ち焦がれる。
「……えーりんなら劉表の狙いが読めるだろ?」
数瞬の後に返されたのは的外れな問いかけ。
向けられるのは信頼の瞳。深くを言わずに相手に思考を積ませるそのやり方は、彼が用いる常套手段。
答えが出ているのか、などとは詠も返さない。彼との付き合いは少しばかり長い。朔夜よりも詠を選んだ理由が、必ずある。
回る思考は黎明の涼やかさを以って、過去の記憶と経験と知識の引き出しを開け放って行く。
「華琳を縛り付けて、袁家との戦時機も早める……だけじゃないわ。劉協様と華琳の関係に対する毒の仕込みと孫策の強制上洛。袁家の出方を伺ってから対袁家連合の発足……までは行くつもりが無いわね。袁家の始末はボク達に任せるつもりでしょ」
隣では賢狼の瞳が冷たく輝く。外部勢力の思惑を読み取る力は、未だ詠の方が上。少しでも吸収できるように、と。
対袁家連合と聞いて一寸驚いた真桜であったが、まだ全てを聞き終わってはいない為に、口を真一文字に結んで続きを待った。
「根拠は?」
「孫策軍に対する奇襲が出来ないからよ。元々なんらかの策略があったにせよ、虎が龍に二度も爪を立てた事に代わり無いから、攻め入る理由付けは立ってる。孫策が居ない間に攻めよ
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