第三十三話 郷愁
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安泰にすることはできないだろう。これは私個人の願いでもある。アベル……。我が兄の意思を継ぎ、どうか王になってくれ!兄はこの国を愛していたのだ」
(父さん……。僕はあなたの背中を追い続けた。あなたは僕に色々な事を教えてくれた。でも……自分のことは教えてくれなかった)
「……今、グランバニアがどのような状態にあるかは知っています。ですが……王になろうとする気はありません」
オジロンの驚いた顔は十分予想できた事だった。アベルはかまわず話し続ける。
「父さんは僕に自分のことは全く教えてくれなかった。自分の故郷のことも、兄弟がいたことも。僕は……父さんの事を何も知らない。何より僕はここに来たばかりの旅人だ。知らない人間が愛した国をいきなり治める事ができるわけがない!」
アベルはそう言うと部屋を出てただ歩き続けた。
父へ抱いていた何か。それが別のものに変わっていくのを感じながら。
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