語り部と火竜と紅蓮
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「出ておいで――――――暴食!」
ビリビリと肌を撫でる魔力に、クロノはミョルニルを強く握りしめた。
ジョーカーは口角を上げたまま、オッドアイを細める。上げた右手に展開する魔法陣から、ゆっくりと何かが現れる。
「箱…か?」
現れたのは箱だった。
空中に浮かぶ巨大な箱は不気味なデザインが特徴的で、全体に禍々しい魔力を纏っている。一見すると古びた宝箱のようなそれを凝視するクロノにクスッと笑いを零し、ジョーカーは箱を見上げ呟く。
「さあ、開くんだ――――――全てを喰らい尽くせ!」
どこか笑うようなジョーカーの声に応えるように、箱がカタカタと左右に揺れる。
その揺れは徐々に大きくなり、カタカタと細かい揺れだったのがガタガタと音を響かせ、古びた鍵が壊れるように開く。
僅かに開いた箱から邪気を感じ取ったクロノは反射的にミョルニルを構えた。
小さく、羽音のような音が聞こえる。
「な……!」
箱が完全に開いた時、クロノは目を見開いていた。
巨大な箱から溢れるように出てきたのは―――――――無数の蠅。
ただの蠅、と言われればそうなのだが、1匹1匹が纏う魔力とその数がクロノを圧倒していた。耳障りな羽音に顔を顰める。何百匹という規模で既にいるというのに、止まる事を知らないかのように溢れ出す。
そんなクロノに、嘲るようにジョーカーは言った。
「これこそ最凶の罪、暴食。無数の蠅の悪魔が全てを喰らい尽くす!6の罪を簡単に退けた君も、喰われてしまえばお終いさ!」
苦戦していた。
戦いに疎い人が見ても苦戦していると見えるであろう程に、ナツは苦戦中だった。
相手は太陽の殲滅者の異名を取る少女、シオ・クリーパー。のんびりとした雰囲気に語尾を伸ばす独特の口調、全身緑という全身で不思議を表しているかのような小柄な少女。いつものナツなら、相手がただの少女なら、苦戦するなんて有り得ない。
が、シオの操る魔法―――――“エネルギー変換魔法”がナツと相性が悪かった。炎を吸収し熱エネルギーへ変える、周囲の熱を奪う事で凍らせる、風は気圧の低い方に流れるという特性を生かし小規模の竜巻を起こす等……万能系の魔法は、炎を扱うナツにとっての天敵とも言えた。
「火竜の鉄拳!」
「学習ー、能力のー、ないー、奴ー」
ふぅ、と呆れたような溜息を零しながら、シオの右腕が淡く赤に光る。
その光に魅入られるように炎が揺らめき、ナツの拳を離れシオの右腕に消えた。こんな事が軽く20回は起きている(つまり、ナツは懲りずに炎を出しまくっている)。
息を切らすナツの後ろ姿を見つめるハッピーは驚いていた。
(こんなにナツが苦戦するなんて…魔法の相性が悪すぎ
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