語り部と火竜と紅蓮
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エリゴール戦でも使ったこの手を再度使ってみると、ナツはあの時のように一瞬何を言っているのか解らない、と言いたげな表情をした。
が―――――すぐに、漫画などで見る怒りのマークが浮かび上がる。
「んだとコラアアアアアアアアアアアアッ!」
当然だが、ハッピーの本心ではない。
だが、よく言えば素直、悪く言えば単純からあまり成長していないナツはその言葉をおかしいほどに真っ直ぐに受け取ってしまった……それを狙っていたからいいのだが。
火に油を注ぐように、ナツの炎が更に燃え上がる。辺りを熱気が漂い、シオのとろんとした眠そうな表情が初めて崩れ、目を見開く。
「増幅ー……?これ以上ー…増えるー…!?」
「んがああああああああああああ!」
「容量をー……超え……!」
シオの頬を汗が伝う。それはきっと暑さ故ではない。
目の前で炎を噴き出すナツは、限界を次々にぶち破っていくかのように炎を増幅させ、更に熱気を纏う。左腕でも足りず、右足と左足の器も使うが、まだ足りない。
「何が何でも倒してやるよォォォオオオオオオ!」
吼え、地を蹴る。
シオの目が見開かれ、咄嗟の防御か両腕を顔の前でクロスさせた。
「火竜の――――――」
全身の炎を両腕に集中させる。
巨大な炎の翼のようなそれを、ナツは薙ぎ払うように力強く振るう。
「翼撃!」
炎の翼が薙ぎ払う。
宙を舞った全身緑の少女が、ドサッと地に落ちた。
息を切らす。
視界にいる自分にそっくりの顔を睨みつけると、その顔は目を伏せた。まるで目を合わせるのを拒んでいるかのようで、アルカは更に苛つく。
ああやって、敵である事を苦しむかのような素振りを見せて。
それでも敵なのに変わりはないから、何故か手の抜いた攻撃をして。
「大火大槌!」
「……水流」
炎のハンマーをエストの杖から放たれた水が掻き消す。
そうやって、一撃使う度に表情を歪めているのに本人は気づいていないのだろうか。
だとしたら尚更タチ悪ィ、とアルカは声には出さず、心の中で吐き捨てるように呟いた。
「お前等は何がしたいんだ。ティアを狙って……アイツに何がある。あんのは超攻撃特化魔法に知識だけだ、捕まえてまで必要なモンなんてねえだろ」
彼女の“星竜の巫女”としての能力を知らないアルカの言葉に、エストは顔を曇らせる。
それが演技なのか、それとも素なのか。アルカには解らない。最後に会ったのは14年前―――アルカが5歳の時だし、そんな昔の事を覚えていようとも思わない。
だから目を伏せるのも顔を曇らせるのも、全てが演技にしか見えないのだった。
「……お前、さっきから何なんだよ」
「え?」
「そう
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