暁 〜小説投稿サイト〜
Element Magic Trinity
語り部と火竜と紅蓮
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…でも、今はそれとは違う。炎を吸収されちゃうんだから、炎を出すのは敵に魔力を与えてるのと同じ事だし)

漸く引っ掛かりが取れた気がしたが、結局何の役にも立たなかった。
あの時はナツが炎を噴き出していても消えるだけだったが、今はそれをエネルギーとして吸収されてしまう。相手が放つのは床や壁をいとも簡単に焼け焦がす熱エネルギーの波動だ、いくらナツでもそれを真正面から喰らえば一溜りもない。

「あああああああああああっ!」
「懲りないー、奴ー」

雄叫びを上げたまま更に炎を熱く燃やすナツを見たシオはふぅ、と息を吐き、右腕に続けて左腕を伸ばした。
――――――その行動に、更に引っかかる。

(どうして左腕も伸ばすんだ?炎を吸収するなら右腕だけでも十分…今までだってずっと右腕だけで……)

ここまで、シオは右腕しか使っていない。左腕はだらんと下ろしたままで、時折髪を払うのに使う程度だった。それでナツの咆哮や鉄拳の炎を吸収してきた。
なのに何故、ここにきて左腕も伸ばしたのか。ハッピーは考える。

(左腕を伸ばす理由…右腕だけじゃダメだから?必要だから?でも何で?……全部を吸収する為?)

つまり、それは。
“ナツの炎を右腕だけで全て吸収するのは不可能だ”という事を示しているのでは?

(そうか!オイラがお魚をお腹いっぱいまでしか食べられないとの同じで、アイツも吸収出来る炎には限界があるんだ!もう右腕は限界で、だけど今エネルギーを放ったらナツの炎と相殺されちゃう。だから左腕を使ったんだ!)

魔導士が魔力を器一杯にしか回復出来ないのと同じ。
それ以上を得ようとすると溢れてしまう為、限界までしか吸収出来ない。多分シオには熱を吸収する為の器のようなものがあり、今までは右腕の器だけで十分だったのだろう。が、苛立ち炎を一気に噴き出したナツの炎を全て吸収するには右腕だけでは足りない。しかも、今放てばナツの超高温の炎によって相殺されてしまう。
だからこそ、彼女は左腕の器も使い始めたのだ。

(って事は、アイツの器全部を満たしちゃえばアイツはエネルギーを放てないし吸収する事も出来ない!だったらオイラにも出来る事がある!)

今すべきは相手の器全てを満たす事。
つまり、ナツの炎を増幅させればいい。その方法くらい、6年も一緒にいて相棒を務めているハッピーは知っている。
魔法も拳も必要ない。

「ナツー!」
「あ?」

ただ、言うのだ。
ハッピー最大級の演技で、ナツの耳に届くように。





「もう無理だね、ナツじゃ無理だよ。グレイなら勝てるんだろうけど」





ハッピー必殺!“ナツを馬鹿にする”が炸裂した。
馬鹿にするような笑みを浮かべ、無理無理、と手を横に振って、吐き捨てるように言う。
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