第三章、その5の1:昔語り ※エロ注意
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一日がまるで天災に遭ったかのように、俺に痛みと苦しみを運んできた。・・・それもこれもあの日のお陰だよ、ビーラ」
「・・・懐かしイな。あの日の事ハ朧のようダガ、少しは覚えてイル。今日ノような満月が出ていた気がスル」
「・・・いや、少し欠けていたな」
「そうだッタか・・・」
ユミルは一歩二歩と近付いていき、ビーラまで数メートルほどの間隔を空けて立ち止まった。そして忸怩たる思いを胸に話し掛ける。
「お互いまだ若かったよな?俺もお前も、あの糞野郎に扱き使われていた・・・。人類の汚物、王立高等魔道学院名誉教授、マティウス=コープスに」
「・・・そうだったナ。毎日のように艱難辛苦ノ命令ヲ強制されてイタ。北へ南へ、東へ西へ」
「そうだ。思い返すだけで忌々しいあの日を、今日、此処で語ろうか。罪を量るために」
ユミルはそう言って静かに息を吐く。そして一段と強くなった階下の悲鳴を背景に、ゆっくりと己の血塗られた過去を話し始めた。
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話は10年前、北方の魔道学院本部に務めていた頃に遡る。魔術学院の任務で俺は湖周辺での生態調査を手伝っていた。そしてその調査の途中、マティウスの出頭命令を下されて急遽奴の研究室に赴いた。覚えているか?学院の別館、その地下に奴の辺鄙な研究室がある。松明の明かりしか無い暗い部屋だ。学院に伏せて死霊術の研究をしていたのか、閉塞感と嫌悪感を催すような薄暗さだったよ。
それに沢山の調度品が在ったよな。人が寝そべられる程の大きさの机に、天井の彼方此方に何かを吊るすような大きな鉤、得体の知れない液体を入れた薬品棚、大学教授にのみ渡される樫とダイヤの錫杖。だがそれでもあいつと比べて印象が劣る。あの血に汚れた灰色のローブ、短く刈り込んだ白髪に黄土色の穢れた瞳、冷淡さを映し出したかのような侮蔑的な視線、そして鳩のような人を食った顔付きにはな。
『やぁ。湖では満喫できたかい?』
『清清しい思いで過ごせたさ。だがその余韻をたった今、貴方の出頭命令で吹き飛ばされた気分だ』
『それは失礼。しかしどうにも無視できぬ仕事があってね、片暇といってはなんだが、君を頼らざるを得ない状況なのだ』
奴は気の触る枯れ声でそう言ってのけて、俺に書状を手渡したんだ。
『私が職務の性質上、いや、使命と言った方がいいな、表立って顔を見せては困ってしまうような方と会ったりするのは知っているかな?』
『ああ、知っている』
『今回もそれに類するものだ。とある低俗な商人と取引をしてね、彼が所有している特別な魔術品を譲ってもらえれば、その頸に着せられた賞金を無きものにしてやろうと取引をしたのさ。所謂、司法取引だね。難しい話かな?』
『俺でも理解できるぞ、それくらいは』
『よか
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