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王道を走れば:幻想にて
第三章、その5の1:昔語り ※エロ注意
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わせるのが響いていく。

「今の聞こえたよな?」
「ええ、中々に通る男の声でしたね」
「・・・呼んでいた」
「はっ?」
「あの声、御主人を呼んでいた」
「御主人って・・・貴女が探している方、でしょうか?」

 パウリナは強い瞳で確りと頷いた。慧卓はミルカに訝しげな視線を向かわせる。

「もしかして、ユミルって人は貴族?ユミルって名に心当たりは?」
「知りませんよ。騎士として働いてますけど、そんな名前の貴族、会った事も聞いた事もありませんって」
「ふーん。・・・ってかお前騎士だったのかよ。そんな歳なのに」
「悪いですか?私、これでも執政長官殿直属の騎士なのですよ。どうです?敬いたくなりましたか?」
「可愛げのない年下の男は嫌いだね。見た目が良いほどむかつく」
「はっ!負け犬の遠吠えですね。私より劣悪な容姿をしている男は皆そう言うのですよ」
「腹立つ事言うな、お前。この機に鉄拳制裁でもしてやろうか?・・・あ、無言で剣を抜かないで。御免なさい」

 慧卓が謝罪する傍ら、ミルカはきらりと僅かに見せた刀身を鞘に収めて、声が走ってきた方向へと目を向けた。

「・・・声は向こうから聞こえてきましたが・・・む?拙いですね。二人とも、此方へ」
「ん?どしたよ?」
「早く!」

 ミルカの強い声に押されるように慧卓ら二人は彼の後へついていき、建物の間に立ち込める細い物陰へと身を隠した。幾秒か経った後、彼らが身を隠した方向へ急ぎ足の音が近付いてきた。鋼鉄の鎧ががちゃがちゃ擦れ合い、粗暴な口調でその音の主達は言う。

『こっちだこっち。あのトカゲの産廃野郎が叫んでた所だ』
『わぁってるわ。ちゃんと賞金は山分けだぞ?中抜きも無しだ』
『知ってるさ。ちゃんと正しい方向に使えよ?塵の掃溜めみたいな慈善に金銭を落とすなんてのはナシだ。俺達はもっと正しい使い方を知っている』
『おお!飯をかっ喰らい、酒を飲み、女を抱く!・・・そういやこの前抱き心地の良い売女が居る店を見っけたんだ、一緒に来るか?』
『いいねぇ。最近は餓鬼相手ばっかりで飽きていたんだ。久しぶりに大人のあのぷにっとした肉を抱きたいもんだ』
『よぉっし。そうとくりゃぁちゃっちゃと愚民を殺しに行きますか』
 
 聴くに不愉快な念以外の何物をも催さない会話を続けながら、男達は慧卓らが潜む物陰を横目に走り去っていく。慧卓はひょいと顔を出してその背を睨み付けた。口調の無教養ぶりから察するに、顔つきも容易に想像出来そうな連中である。

「今のはなんだ?穏やかな会話じゃなさそうだったが」
「ああいうのを、悪徳憲兵というのですよ。多分昼の事件の首謀者に賞金が掛かったのでしょう。小遣い稼ぎに来たに違いありません」
「あの、憲兵って普通は決められたルートに従って街を警邏してい
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