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王道を走れば:幻想にて
第三章、その5の1:昔語り ※エロ注意
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っかり、そして物を確認した。奴の指定通りの品が置いてあったよ。小さな木箱に収まった裁縫用の針と鋼の糸の束が、ぽつんとな。俺が荷台を降りた時、商人の男が不安げに話しかけてきた。

『・・・なぁ、あのマティウスってのは信用できるのか?なんか物凄く嫌な予感がするんだが』
『・・・性格は最悪だが、仕事は出来る男だ。心配は無い』
『そういう意味じゃねぇよ。なんかこう・・・矢が刺さるような・・・刺々しい視線が感じるんだよ』
『?そんなの感じんぞ』
『俺には分かるんだよっ!!ほら、あそこの木の陰とかーーー』

 男がそう言おうとした瞬間、そいつが目を向けた方向から一矢の矢が飛んできて男の頸に突き刺さった。 
 
『っっ!!!なんだと!?』

 俺は慌てて荷台の木箱を回収しようとしたんだが、次々に降りかかる矢雨に見舞われて如何にもならなかった。俺は任務の断念を決意して、切り株を越えながら樹林の中を駆け抜けていった。

『逃がすなっ、追え!!!』

 後ろから聞こえて来る男達の声に苛立ったよ。何が如何なっているのか全くわからなかったんだからな。文句の一つも出るさ。

『くそっ、一体なんなんだっ!!』

 俺は倒れ込んだ大木の影にあった窪地に身を潜めた。俺を見失ったんだろうか、男達がいきり立った声を出していたな。

『まだ近くに居るぞ!枝が踏み倒されている』
『逃がすなよ。マティウス様が報酬をたんまりと用意してくれるそうだ』
『ああ。たっぷりの金貨を俺らに授けてくれるんだってな?』
『期待できそうだ。役人の寝首を刎ねるよりもずっと楽な仕事だしな』

 其処に至って俺は漸く事態を理解できた。俺の存在に嫌気が差したマティウスが、悪徳の商人諸共殺そうとしたという事実にな。・・・後から考えればマティウスの立場に立てば、心情も分からなくは無かったさ。知識の研鑽と魔術の発展に貢献する建前の癖に、それを支える助手は全く使い物にならぬ筋肉漢だったんだからな。長らく一緒に居るうちに殺意も沸くというものだ。だが当時の俺も、今も俺もそうではなかった。

(マティウスっ・・・裏切ったなっ・・・!!)

 どんな形であれ、俺が奴に長らく貢献していたのは事実だ。奴が一人では解決出来ないと判断した問題を俺が代わって解決した。研究による副産物が環境に甚大な被害が出ると分かれば、率先してその駆除に当たったさ。だが奴はそれを無視する形で俺を嵌めたんだ。俺を仕留めて己の心の満足を得るためだけに、商人までも闘争に巻き込んだ。無関係な人間まで殺害した奴の性根が気に入らん。

『・・・居タゾ、其処の大木の後ロダ』
『ちっ!!!!!』

 結局居場所を突き止められて俺は更に奥へと逃げ出した。追跡を振り切れたのはそれから数刻後、昼間の太陽が昇る頃合だった
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