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王道を走れば:幻想にて
第三章、その5の1:昔語り ※エロ注意
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った。君の学識の至らなさには昔から随分と困っていたからね、難解な言葉は避けて言っているのだよ』

 俺が無学の輩と知っていて尚、奴は挑発するかのように口端を歪めて言ってな、腹が立って仕方が無かった。奴は机に乗ってこう言った。

『商品の受け渡しは明日に行う。まぁ私が出向いても問題は無いのだが、仕事があるし、職務上面子の問題もある。其処で君だ。実に簡単だろう?』
『・・・そうだな。貴方が作成した魔獣の後始末や実験の後片付けに比べれば、いたく容易な問題に見える』
『おいおい、問題にすらならない幸せな事だろう?何せこれを終えた暁には、君を解雇する予定なんだからね』
『本当か!?』

 俺は飛び上がって喜んだよ。何せ奴の命令は常に唐突で、そして残虐なものだったからな。学院に雇われていた唯の助手に過ぎなかった俺にとっては、何度も己の道徳観や信念を踏み躙り穢すかのようなものでな、命令を果たす度に懊悩したものだ。だがその苦難の日々とおさらば出来るとあってそれこそ有頂天になったんだ。
 あいつはにやけ面のままで言ったよ。

『嘘は吐かないさ。私は気に対して一度たりとも虚飾を交えなかったが故に、今回も嘘は言わん・・・これを機に浅慮で浅薄な君ともお別れさ。寂しくなるね?』
『清々するさ!休暇の時よりも気分が良い!!』
『素直なのは宜しい!今渡した書状に場所と詳しい時間が記載されてある。早々に準備するが良い』

 俺は直ぐに踵を返して出て行ったが、振り向くべきだったんだろうな。奴が最後に浮かべていた笑みの意味を、あの日に至るまで露とも考えた事が無かったんだから。



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「その後、お前と最後の会話を交わしたよな?別れの言葉を」
「・・・そうだナ。微かダガ、覚えているヨ。厩舎の近くだったカ?」
「そうだ。秋は紅葉が咲き乱れる綺麗な場所だ。俺達は其処に居た」

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『ソウか・・・明日デお別レか』
『そういう事だ。これであのいけ好かない下種男に会わなくても良いってぇなると、清々するさ』
『・・・俺は寂シイぞ。マダあいつニハ世話ニなるだろうカラ』
『仕方ないだろ?お前の、里親なんだからよ』

 そうだ。二人で樹木に背をついて世間話をしていたんだった。俺もあの時は髪が長かったな・・・、髪を横にぶわっと流して額を見せて、後は適当に肩辺りまでぼさついてただけの髪だった。お前は昔も今も大して変わってないがな。

『終わっタラ、如何する気なんダ?』
『そうさな・・・。悔しいけどよ、俺に学識が足りないのは分かってる。今更役人とか、教授を目指すってのは無しだ。だから此処を辞めたら精々、農民か大工に落ち着くだろうな』
『・・・案外
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