幽鬼の支配者編
EP.22 蠢く陰謀
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の事を『家』と、仲間を『家族』と認めていても……心のどこかでは、そんな自分を捻くれて冷めた目で見てはいなかっただろうか。
その時々ではそんな事は思わなかったのだが、今になって思えば、自分は無意識に仲間たちと100%の自分を見せて向き合う事を避け、心に壁を張っていたのかもしれない。
その次に、ワタルが思い浮かべたのは……
「……エルザにも、そうなの?」
「ッ……」
緋色の髪の持ち主。
心を占める彼女の事を考えている時に、ミラジェーンにも指摘されたワタルは、偶然とはいえ結果的に考えている事を読まれた形になってしまい、少し息を飲んでしまう。
彼女の問いは具体的な物ではなかったが、彼女が何を言っているのかは、ワタルにも分かる。彼女との付き合いは、エルザほどではないが長いのだ。
ましてや、ミラジェーンはエルザとかつては切磋琢磨していた。少し天然入ってはいるが、心の機微に聡い彼女がエルザに関して自分に言う事となれば、嫌でも分かるというものだ。
ワタルは心に生じたわずかな動揺を消すと、答えた。
「……そう思ってるつもりだ」
「そう……」
「?」
ワタルが肯定すると、ミラジェーンの表情に、一瞬だが僅かな憂いの色が走った。
瞬きしたら消えていたような、ほんの一瞬の事であり、すぐに笑って祝してくれる彼女を見て、ワタルはそれを見間違いか錯覚だと断じる。
「良かったじゃない! エルザもきっと応えてくれるわよ」
「……そう、かな。そうだったら嬉しいけど……」
誤魔化すように笑ったワタルだが、昨日の夜の事を思い浮かべてしまって頬は熱を持ち、内心では浮かれ気分を制するのに理性を使っていたため、さっきのは目の錯覚か何かだと思い込み、それについては考えない。
ほどなくルーシィがシャワー室から出てきて自分の境遇を話し始めたため、それを思い返す事も無かった。
= = =
「……で、戦いもせず逃げ帰ってきたと?」
場所は変わってフィオーレ王国の北東に位置するオークの街……の外れの丘にそびえたつ古城。荒れてはいるが、魔導士ギルド・幽鬼の支配者のれっきとした本部だ。
本部からほど近いオークの街に支部を置いているのは、幽鬼の支配者が、フィオーレに存在する魔導士ギルドの中で最も規模の大きい事が主な理由である。オーク支部は窓口といったところか。
城のような本部の玉座に腰掛けているのは幽鬼の支配者のマスター・ジョゼ。
首元に十字架と四葉のクローバーを模した聖十の証を煌めかせ、任務失敗の報告をしたエレメント4の一人、大地のソルに確認していた。
撤退の際にああは言ったが、叱責や罰則の一つは覚悟して
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