幽鬼の支配者編
EP.22 蠢く陰謀
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断したワタルの返答に、ソルはあくまで紳士的に返す。
「おや……ギルドのお仲間なのに、ルーシィ・ハートフィリア様をご存じでない?」
首を90度傾けながらのソルの問いに答えたのはワタルではなかった。
「……なんで……ゴホッ、それを……」
ハートフィリア。ギルドにも言っていない自分のファミリーネームをおぼろげな意識で聞き取ったルーシィは覚醒すると咳き込み、飲んでしまった水を吐きだしながらも尋ねる。
「ルーシィ、無理をするな」
「おや、気が付きましたか、ルーシィ・ハートフィリア様。ご令嬢が家出したとなれば、探そうとするのが普通でしょう」
「そんな事、あの人はしない! 気にする訳が無い!」
その苦悶の表情が、さっきまで溺れていたからだけではない事は、今までに無い程に狼狽えるルーシィの反応を見れば一目瞭然だった。
目の前には仲間の仇がいる。だが今はルーシィを優先するべきだ。
そう考えたワタルは、睨み合う――と言っても睨んでいるのはルーシィだけで、ソルの方は余裕の表情だったのだが――2人の間に入り、ソルとジュビアを睨むと口を開く。
「……とにかく、お引き取り願おうか」
「そういう訳にもいかないわ。これも仕事だもの」
「血を見るのがお望みなら、俺は構わないぞ」
ジュビアの返答に、ワタルが目を険しくして敵意を2人に、特にソルに向ける。ソルは少し思案した後、彼女に提案をした。
「……ジュビア様、ここは引きましょう」
「ムッシュ・ソル、任務はどうするの?」
「偉大なるマスター・ジョゼは聡明な御方。この程度の失敗で計画を止めるなど有り得ません」
「……分かったわ」
納得したジュビアがソルの説得に応えると、彼は出てきた時と同じように、身体を地面と同化させて消える。ジュビアもまた、身体を水に変えると、その場から姿を消した。
雨が止み、ソルとジュビアがマグノリアから居なくなったことを確認したワタルは、蹲って何も話さないルーシィの方を向いた。
「……」
よほどショックを受けたのか、ルーシィは幽鬼の支配者の二人が消えても蹲ったままだった。
応えない彼女に、少し思案した彼は片膝をつくと、なるべく優しく声を掛ける。
「どういう事情があったか知らないけど、お前は妖精の尻尾のルーシィだ。マスターやエルザにナツ、グレイ、ハッピー、エルフマン、ミラ――他の連中だってきっと同じこと言うさ」
「でも……あたしが家出なんかしなければ……」
自責に苦しみ、渋るルーシィ。彼女の胸の中には、壊れたギルドや傷つけられて今も眠る親友たち、そして……自分から自由を奪おうとする父・ジュードの姿があった。
自分の父親、ひいては自分の家出が
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