第一部
第一章
現実から虚実へ
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頭を下げては、俺のなでやすいように動いてくれる。そのイブの姿、様子を見ているって、ただそれだけで、ぼんやりと考えているだけじゃわかりもしないことをぼーっと考えていることが、だんだん馬鹿らしくなってくるもんで……。
「……楽しいに決まってるだろ?」
特に当り障りのない。でも確かに本心からの想いを乗せた、ほんの短い言葉を目の前の少女に向けて、燻る思いは心の内だけに秘めて、俺のできる限り優しさを込めて呟いた。
「……そっか。」
言葉少なに、ぽすっと俺の胸元に頭を預けては、口を閉じるイブ。俺もこれ以上は何も言わない。さっきから高鳴り止まない鼓動がイブに伝わらないかと、内心ドキドキしながらも、俺はイブの頭に手を乗せる。いつものようにイブが頭を預けてくれるのならば、俺だっていつものように髪に触れ、指で梳き通し、頭を撫でる。それだけで、もう至福の時間だった。ずっとこうしているだけでも、俺にとっては何にも代えがたいひと時だった。
………
……
…
「……寝すぎちゃったね。」
「……ま、そうだな。」
俺たちは隣り合わせで、大きな一本柳の太幹に背を預けて、眼下に広がる広大な草原を見据えては、無常で無情な時間の流れをひしひしと感じていた。体感時間は、まだそれほど経っていないようにも感じる。でも、イブが……俺にちょっかいをかけていた時には、空の真ん中少し手前に燦々と輝いていたお日様も、いつの間にやら地平線との距離を詰め始めていたのか、既に俺たちの影は後ろに伸び始めていた。
確かに寝すぎたよな……これは。
一連のじゃれ合いのようなものの中で、イブの突然の行為に俺自身、体力精神力ともに、多分だけれども相当持っていかれていたんだと思う。イブが凭れかかってきてから僅かな間の記憶こそあるものの、そこからの記憶はさっぱりだった。俺も……イブもきっとすっかり眠りこけていたんだろうさ。
「くあぁ……」
隣から可愛らしい欠伸が聞こえてくる。
「まだ眠いの?」
「んー……ん。これくらい眠い、かも。」
そう言いつつ、腕を広げて見せるその大きさは、両腕いっぱいもある。見事に広がったその手は全開。右手は俺の目の前でぷらんぷらんと揺れている。
「……まぁ、すごく眠いってことはわかる。」
「うー……ん。」
本当に眠そうに、ボーっと眼前の光景を眺めているイブ。たまに我慢しきれなくなったように目を閉じては、すぐにハッと我に返ったように目を見開く。そしたらまた、目の前の平原をボーっと眺めては、やがて目を閉じる。それの繰り返し。
多分、本当に眺めているだけなんだろうな……。
ボーっと眠たそうなイブを、ただ俺はじーっと見つめる。
そうだなぁ……最近、イブと会っても一緒にいるだけで特に何もせずに過ごしてるからな。いや、むしろその方が俺は好きなんだけれども……でも、たまに
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