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Eve
第一部
第一章
現実から虚実へ
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顔あかーい。」
「うっさい。」
「ねぇねぇ、こっち向いて?」
「……いやだ。」
「えー?」
問答する度に顔を背けざるを得ない俺と、いたずら心に火が着いたかのように、にやーっとした笑みで俺の顔を覗きこんでくるイブ。顔ごと視線を逸らしても逸らしても、イブは顔を回りこませて細めた目で俺を見つめてくる。
……ったく。調子乗ってるな、イブのやつ。
俺にいたずらなんて、いつもならば滅多にしてこないのに、味をしめたのか今日に限ってはここぞというばかりにからかってくる。まあ、それもしかたないかと思う反面、なんとなく悔しい気持ちも強い。
そりゃそうだろ。普段からからかってる相手に、散々っぱらからかわれ続けているんだから……。
でも、イブの普段は見れないような表情に高鳴る鼓動は……やっぱり俺の言動に反して正直だってことは変わらなかった。
「ねぇ、恭夜。」
「……ん?」
少し落ち着いた口調。心なしか表情もいつも通りの微笑みを携えた、いつも通りのイブに戻っているような気もする。さっきまでの悪い笑みじゃない。もっと純粋ないつも通りのイブらしいイブの笑み。
「お、おい。」
スッとさり気なく、特に意識した様子もなく俺の方へと顔を近づけて、見上げるように上目遣いでイブは俺の顔を覗いてきた。
ちょ、ちょっと待てよ。ようやく心の臓の鼓動も正常に戻ってきたってんのに、また……。
「今、楽しい?」
「え?」
「ここにいて……楽しい?」
不意に、何の前触れもなく突然イブは言葉を紡いだ。イブとの距離に意識が向き、また高鳴る鼓動。微笑みを浮かべて、俺のすぐ近くで……もうすぐ顔と顔がこつんと、当たってしまいそうなほどに近くで俺を見つめる。
イブの心中は正確には察せない……けれども、その言葉の裏にはどことなくいい意味も悪い意味も、そのどちらともを含んでいるような気がするのは、さっきまでのイブが本当に楽しそうに笑っていたからなのか、それとも……。
「……いきなり、どうしたんだよ。」
イブの頭に触れる。さらっとなでる度にくすぐったそうに目を細めては、頭を下ろした。
「んー、とくに意味はないよ。ただ……」
「ただ?」
一度、どもったようにイブは言葉を区切った。どう言おうか迷っているのか、それともいうべきか言わないべき迷っているのか、はたまた全く違うことを考えているのか。それはわからない。でも、何か自分の中で問答しているような、そんな表情をしているのが、なんとなく気になってしまう。
「……ちゃんと楽しんでるのかなーって。それだけ。」
すぐに一言、沈黙の割には当り障りのない言葉を口に出しはするものの……なんとなくぼんやりとした、ハッキリとしない違和感は、俺の心の隅で燻った。
でも、その間にも俺がこの手でイブの髪に触れるたびにくすぐったそうに目を閉じて、ゆっくりと
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